第15話 逆転

2018年2月7日 PM4:00


【えぇっ・・・?】

宏と沙也加は同時に声を出した。


絵美は優太の手をギュッと握りしめて、同じ言葉を告げた。


「私と優君は結婚します・・・」


絵美の迫力に押され、

宏は何も言えずに喉を鳴らした。


「じ、冗談じゃないっ・・・!」

沙也加が叫んだ。


絵美に掴みかかろうとするのを優太が遮った。


「お腹の子・・宏のなんだろう・・・?」

図星をつかれて沙也加の表情が変わる。


だが、したたかな女は平然と言葉を返した。


「何、言ってるの・・バカじゃないの・・・?」

ふてぶてしい態度に優太もあきれながら声を返した。


「大学の友達が沢山、証言してくれたよ・・・

前から宏と抱き合っているのを見ていたり、

君とセックスしたっていう奴もいたよ・・・」


「お、おい・・・」

宏が狼狽えて声を漏らしている。


「DNA鑑定があるわ・・・」

絵美がポツリと呟いた。


「血液型は優君と宏さんは同じだけど・・・

鑑定すればハッキリと証明される筈。

第一、優君は睡眠薬を飲まされて、

私と同じだけど・・・

沙也加さんとは関係はもっていない。

貴方の処女の証しと同じ、嘘だったのよ・・・」


次々と指摘される事実に沙也加も宏も口をつぐんでしまった。

元々、無理がある計画で宏も度胸が無い正体を晒すのだった。


歯ぎしりする二人を残して絵美と優太は店を出て行った。

腕を組む絵美の温もりを心地良く感じながら優太が聞いた。


「君が時空を超えたというのは、

今も信じられないけど・・・」


絵美は男の顔をジッと見つめながら聞いている。


「確かに彼女の言動なんかを思い起こせば

辻褄があう、でも・・・」


「ゴメン・・ね・・・?」


優太の言葉を遮るように組んでいる腕をギュッとした。


「やっぱり、産みたいの・・・

あの人の子供だけど・・唯奈は・・・・」


見上げる絵美の瞳から涙が溢れている。

優太も絵美の腕をギュッと抱きしめた。


「優君が嫌だったら・・一人でも産むわ・・・」

「絵美・・・」


優太はそれ以上、言わせないように絵美を強く抱きしめた。


「ゴメン・・

絵美から全てを聞いているのに疑って・・・

信じるよ・・・

そして、僕達の子供もつくろう・・・」


「優君・・・」


二人のシルエットが夕闇に重なっていくのであった。

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