大河ルルリスと都市国家(四)
「これは国家の大事である!
「いいや、彼らはまぎれもなくコタールの民である! 民を守らずして何のための城塞か!」
どうやらコタール王国は常に隣のミゼル伯国との争いに悩まされており、何かにつけていざこざが絶えないらしい。
その原因の多くはやや知性に劣り感情に流されやすい
なぜ他国の勇者が同席しているのか! と私達を指差す者まで現れて会議は揉めに揉めたが、結局ヘンリー城主は国境の警戒を厳とすること、こちらからは手を出さず防御に徹することのみを決めて散会となった。
「やれやれだ。妥協とか折り合いとか中庸とか、大人の言葉を知らんのかね、あいつらは」
「どっちつかずって言葉が抜けてるぜ、公爵殿」
ヘンリー城主と私達だけが残った会議室、激論の
もしかするとこれがヘンリーさんの評判が悪い原因かもしれない、と私は先程までの会議を思い浮かべた。国の安定のためには
「やれやれだ。奴とやり合うのは骨が折れるんだがな」
「いいのか?
「他にまともに戦える奴なんていねえだろ。あいつだって収まりがつかないと困るんじゃねえか?」
やれやれどっこらしょと腰を上げる師匠だが、私には二人の話の内容がさっぱりわからない。察するに
やっぱりヘンリーさんに
コタール王国とミゼル伯国とは両国を隔てる森と湿地を緩衝地帯としているものの明確な国境線というものは無く、双方が都合良く解釈しているため
そのような係争地に他国の勇者である私達が絡めば話がややこしくなる、かと言えばそうでもない。勇者などというものはあくまで『何者かが認定し、その勢力範囲内において特権を
つまり私達はこの地において何の特権も持たず、仮に死亡したところで墓も立てられず、侯国は「我が国は一介の勇者の行動などに関与していない」と強弁することになる。本来ならば師匠も首を突っ込みたくない事案のはずだが、そのあたりは個人的な
森と湿原の境目で
一触即発……と言いたいところだが、実のところそうではない。
「あれ? あの人は……」
「
「よう、
「こちらの台詞だ、
「ものは相談だ。俺に免じて
「俺にそんな権限は無い。こちらの隊長に言ってくれ」
「はっ、他の奴らなんざ知るか。お前に言ってんだよ」
「それはあんたが俺の相手をしてくれるという意味か?」
「んなこと言ってねえよ。帰れ帰れ」
「悪いが手ぶらで帰る訳にもいかなくてな。少々遊んでもらうぞ」
「話の通じねえ奴だな、まったくよ」
互いを軽く
誰か旧知の人と戦うのだろうとは思ってはいたけれど、まさかこんな所でこんな相手と戦うことになるなんて。私は想定外の事態にあわあわと慌てふためくばかりだった。
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