大討伐と二度目の別離(五)
南壁五
「何してるの? 背伸びなんかして」
「いやあ、星を捕まえられるかなって」
「相変わらず面白いことするよね、リナちゃんって」
「えへへ、もうちょっとな気がするんだけどなあ」
「ふふ、もう少し背が伸びたら届くかもしれないね」
心から
私はいつからこの子を特別な存在だと思っていたのだろう。きっと出会った時から夢中になっていたのだ、こうして風に揺れる銀色の髪に、曇りのない金色の瞳に、
でも私達に与えられた時間はたった一刻。もともと時間に正確なリージュだけれど、
「一刻かあ、短いね。やっと会えたと思ったのに」
「うん、寂しいね」
「また会いに行くよ、冬になったら暇になるんだし」
「駄目だよ。また無茶する気でしょ」
弟と妹は元気? 最近はどんな研究をしているの? ちょっと痩せたんじゃない? 自分のことを後回しにしちゃ駄目だよ? リージュはいつも人のことばかりだから……
また無茶してない? お酒飲みすぎてない? ちょっと背が伸びたんじゃない? 手紙に書いてあったエクトール君って人とはどうなの? リナちゃんって勢い任せなくせに奥手だから……
そうじゃない、私がしたいのはこんな世間話じゃない。限られた時間でもっとこの子に近づきたい。
私は後悔している、リージュを手放してしまったことを。それが彼女のためだ、この子には才能に
だからこの口から出てきたのは、思いとは全く関係のない言葉だった。
「あのおとぎ話みたいだね。ほら、一年に一日だけ空に虹の橋が架かって、海のむこうの王子様が花売りの娘に会いに来るってやつ」
「ううん、そんなお話あったかなあ」
「知らないの!? 『雨雲と王子様』だよ、みんな知ってるじゃん」
頭の中で渦巻く思いと口から出てくる言葉が一致しない。もう時間がない。二人励まし合って苦難を乗り越えて、一緒に借金を返して、死線を越えて……共に過ごしたあの短い時間の何と尊かったことか。控えめに微笑むこの小さな体を抱き締めて、どこか遠くに連れ去ってしまいたい。
「……そろそろ、行くね」
「……うん」
控えめに胸に飛び込んできたリージュを、私は抱き留めることができなかった。そうすれば戻れなくなることを知っていたから。
小さな背中が階下に消える。満天の星の下で一人になった私は、急に厳しい顔をしたと思う。
おかしい。『雨雲と王子様』といえば、イスマール侯国どころか世界中で親しまれているおとぎ話だ。
博識なリージュがそれを知らないはずがない。それにあの芋虫の
『
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