大討伐と二度目の別離(三)
連なる丘陵、薄くたなびく雲、行く手に黒々と広がるは『ドゥーメーテイルの大樹海』。あるいは傷だらけの鎧を誇らしげに身に着け、あるいは揃いの軍装に身を包み、
昼なお暗い大樹海。深く踏み入るに従って木々は奇怪に
とはいえ今年の大討伐は順調のようで、一〇〇〇名を超える討伐軍は少々肩透かしを食ったように樹海の奥へ奥へと分け入ってゆく。昨年は魔人ペイルジャックなどという強敵と遭遇して大きな被害を出したものだが、今のところそのような強大な妖魔は見当たらない。各国の勇者達が個々の武勇を
私と
「
「駄目です。侯爵様から無理させないように言われてるんですから」
「その割に昨日はお楽しみだったみたいじゃねえか。ええ?」
「うう……」
それを言われると辛い。確かに昨日の前夜祭ではリージュと再会できた喜びのあまり、この人を放り出して飲んだくれてしまったのだ。これでは『飲んだくれ二世』と言われても仕方ない。
少し前進しては休憩し、味方を援護しては引き上げて雑談し、すれ違う勇者達と情報を交換してまた歩き出す。彼らの話によるとどうやら妖魔の数が少ないようで、今年はこのまま大した障害もなく大討伐を終えるのではないか。陽が傾き始める頃には多くの者がそう言っていたのだけれど……
「―――遭遇!」
「―――出現!」
にわかに前方が騒がしくなり、緊張を
「やれやれ、よっこらせ」
「行くんですか? やめておいた方が……」
「なあに、見物だ。どうせ役になんて立たねえよ、俺もお前もな」
毒々しい色の下草を踏みしめ、奇怪に
激しい戦闘だ、しかも一方的に押されている。個々の勇者達は武勇を
こういった組織化された妖魔の軍勢は『
「ありゃあ
配下の妖魔を力と恐怖で従え、知性に乏しい
戦線崩壊には至らないものの押しまくられる一方の勇者達を見て、
「しゃあねえな、ちったあ働くとするか」
「駄目です! 大人しくしててください!」
「うるせえ、邪魔すんじゃねえ」
私を押しのけてふらりと敵軍の前に立ち、抜き打ちに槍の穂先を斬り飛ばす。敵中に躍り込み無造作に
「おい勇者ども、さぼってんじゃねえ。こいつらの首、
もともと武勇に自身のある勇者達、その豪語に負けじと先を争って
「下がってください! まだ体が痛むんでしょう!?」
「お前こそどいてろ。ひよっこが生意気言ってんじゃねえ」
「ひよっこを死なせたくなかったら、素直になればいいんです!」
ちっ、と舌打ちの音が聞こえた。私のやり方が気に入らなかったか、それとも
これでは駄目だ。師匠の剣にいつもの冴えがない、相手を小馬鹿にするような余裕もない。いずれにしても私達は魔軍に飲み込まれつつあったのだけれど……
敵軍が割れた。地割れのように、中央から真二つに。一刀のもとに
「たまには素直になってはいかがかな、
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