大討伐と二度目の別離(二)
リージュの非難がましい視線を受けて体を縮め、声をひそめる。これでも一応反省はしているのだ。
「そういえばさ、『
「……ううん、まだわかんない」
そう答えたリージュの顔を観察する。このような場合、言葉だけで判断するのは禁物だ。表情、会話の間、抑揚、言葉の選び方、あらゆる感覚を総動員して隠された真実を探らなければならない。特にリージュのように賢くて慎重な相手ならば
それらを総合して私が探し当てた答えは……この子は
「気を付けなよ、おかしいと思ったらすぐ手放すんだよ」
「うん、大丈夫。そういえば最近わかったんだけどね……」
『
リージュらしいな、と思う。魔法といえば強力な攻撃魔法や他人に影響を及ぼす精神魔法を思い浮かべる者が多いが、彼女は人々の生活のためにその知識と力を使いたいという。やっぱりこの子はどこまでも優しくて賢くて人の幸せを願うことができる、自慢の親友だ。
ふと視界が
緩やかに波打つ金色の頭髪、端正な顔立ち、彫刻のように鍛え上げられた身体、華麗な軍服。
「
「リナレスカさん、侯国勇者になったそうだね。おめでとう」
差し出されて握り返した掌は大きく力強く、厚さはリージュの小さなお手々の二倍はありそうに思える。
その表情はまぎれもなく
だからこのとき背後から
「よう、
「これは
「ふざけてんじゃねえ。こいつの間抜けぶりは並みじゃねえぞ、お前も巻き込まれないように気をつけろ」
しばし私を
その
「ようお嬢ちゃん、
「お久しぶりです、
「こいつには常識が通用しねえんだよ。やるって言ったらやる、行くって言ったら絶対行く。何でも体力と根性で何とかなると思ってやがる」
「あはははは……」
両手を広げる師匠と苦笑いするリージュ、二人に向けて頬を膨らませる。失礼な。私だって何も考えていないわけじゃない、防寒着だって装備だってちゃんと準備したのだ。まあたまには斜面を転げ落ちたり、凍った川に落ちたり、狼と
「
「はい……でも彼は人に厳しいですが、自分にはもっと厳しい方ですから」
「そうだろうな。年々余裕がなくなってきてやがる」
「え……?」
「あれでも十年も前には俺と飲み明かしたんだぜ。翌朝青い顔して出てきてよ、もう二度と俺とは飲まねえとか抜かしたもんだ」
「えええ!? あの人が!?」
「ま、あいつも人間ってこった。弱いところもあれば恥ずかしい過去もある、助けてやってくれ」
私はリージュと顔を見合わせた。あの
そう思って
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