凡才隊長と飲んだくれ(四)
隊長である私がまず気をつけたのは、目的地への接近経路と到着時刻。ルイザの町から朝一番の駅馬車で最寄りの
廃村の手前で街道を外れて山中に分け入り、稜線を越えて向こう側を見下ろすと、崩れかけた家々の間に数個の人影が
「やはり
「で、どうするよ?」
「まずは威力偵察をします。必要に応じて
「了解だ、隊長」
年齢も実力も経験も私よりずっと上のこの人に隊長扱いされるのは相当にこそばゆいのだけれど、きっとわざとなのだから仕方ない。私は背中に
三十戸余りの家はほとんど原形を保っているが、生活感が全く感じられない。戸は破れ壁は
その中を
「……!」
物陰から機を
刀身を布で
「俺は待機か? 隊長」
剣を鞘に納めたまま
「え、は、はい。抜剣許可、無闇に交戦せず私を援護してください」
「おい隊長、前方不注意だ」
後ろを振り返って指示を出した私は、前方から飛び込んできた獣の影に気付くのが遅れてしまった。その体当たりを辛うじて
「ひゃあああ!」
「
口を固く結んだまま涙目で、でも体はちゃんと反応していた。再び跳躍してきた
一通り見て回った廃村の中に
村の中で最も大きい、農村には似つかわしくない二階建ての館からそれは聞こえてきた。小太鼓、大太鼓、横笛、弦楽器に
星空の下を勇壮に響き渡る軍歌、だがそれを聴く者は私達の他に命無き者のみ。雄々しく勇ましく整然と、だが無意味に
「これは一体……?」
「
ほんとこの人、頭にくる。私はにやにやとしか表記できないような馬鹿にした笑いを浮かべる部下を、頬を一杯に膨らませて
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます