左利きのエクトール(八)
この
商人さんと一度打ち合わせを行い、正式に契約を結んだ翌日の待ち合わせ。乗り込んだ馬車には……既に
「よう。また会ったな、坊主。俺も一緒に
意地の悪い笑みを浮かべる
「降りるのか? いいぜ、違約金を払える金がありゃあな」
背後の私にまで歯ぎしりの音が聞こえた気がする。彼がこれほど
荷物と勇者三人を乗せ、やがて馬車は動き出した。
「いいのか?
エクトール君はその声を受けて弾かれたように目を覚まし、胸に抱えた『
「そろそろ休憩に致しましょう」
そう商人さんが言い出したのは正午を少し過ぎた頃、場所はイセルバードから南に下った草原地帯。大きな木の下で硬く焼いたパンを水で流し込むだけの昼食を摂る私達、エクトール君だけは少し離れた場所で同じような食事を
「ここでいいぜ、ご苦労さん」
「左様ですか、では私はこれで」
そう声を掛けたのは
「さて。始めようか、坊主」
不敵な笑みを浮かべて剣を抜いた
そう。これは最初から
「僕を
「どうかな。それに一つ間違ってるぜ、強えのはお前さんじゃなくて『
「その『
二人の侯国勇者の間を緩やかな風が流れる。論戦が終わって互いに剣を抜き放ち戦機は熟したというのに、どちらからも仕掛けない。
無理もない。戦う前から疲労しているエクトール君は無闇に動き回りたくないだろうし、
だが
「やめだ。話にならねえ」
そう言って剣を鞘に納める
「どうしました? 今さら命が惜しくなりましたか?」
「弱い者
安い挑発に安い挑発で応じた
「私もそう思うよ、今のきみになら私だって勝てる」
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