左利きのエクトール(七)
肌身離さず剣を帯びて常に
「随分と効いてるな、ありゃあ」
雑踏の中で
「それにしても用心深い野郎だ、この分じゃ薬も寝込みも対策済みだろうな。いっそのこと正面から行くか」
こうしてまたしても私はエクトール君の元に派遣された。彼は
「迷惑だよ、リナさん。もうついて来ないでくれないかな」
「ごめーん、私もそう思うの」
「僕に斬られるとは思わないのかい?」
「それは無いよ。エクトール君はそんな事しないもの」
そう言いながら三歩後ろを離れずについて行く。目の周りの
やがてエクトール君が入っていったのは裏通りの魔装具店。古木の杖、とんがり帽子、各種
「【
「この通り、僕は侯国勇者エクトールです。後日必ずお支払いしますので、後払いでお願いできませんか」
イスマール侯国の紋章が刻まれた銀のプレートを示して頭を下げたエクトール君だったが、それは
「お金ならあるよ」
私はそう言って、
「
彼はしばらく複雑な顔をしていたが、結局はお金を受け取ると魔法の付与をお願いした。本来ならば品を預けて後日受け取りになるそうなのだけれど、今回は追加料金を支払うから今すぐに付与してほしい、儀式にも立ち会わせてほしいと伝え、渋々ながら了承された。
真っ黒の遮光カーテン、昼間だというのに
刀身が
「世に
刀身が徐々に鈍い光を帯び始めたのは気のせいか、それとも魔法が宿りつつあることを示すものか。やがて一刻ほどの時が過ぎ、『
「わざわざ敵を万全の状態にするとはね。ずいぶんと甘く見られたものだよ」
「エクトール君は敵じゃないよ。私達はきみを助けようと思ってるんだから」
「余計なお世話だよ」
右腰に『
狐と狸の化かし合いは、私の理解が及ばない水準で続く。
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