左利きのエクトール(三)
翌日エクトール君に案内されたのは、ウラムの町の南西に広がる針葉樹の森。崖沿いのやや開けた場所に生木と枝葉を組み合わせて作った粗末な小屋が四つ、崖には私達が並んで入れるほどの洞穴が口を開けている。
「
このように異なる種族の妖魔が共存している集落は
「よく調べたね? 巣を特定するのが一番大変なのに」
「簡単だよ。先日
彼はあっさりと言うけれど、実はそれほど簡単な作業でもない。
知性に劣る
集落では数匹の
「どういう作戦で行くの?」
「そんなものは無いよ。強襲だ」
言うが早いか、エクトール君は隠れていた茂みから飛び出した。
そんな馬鹿な!? 私はつい声を上げてしまった。彼の技量は私に及ばないどころか並みの兵士程度で、
雑な襲撃に気付いて警戒の声を上げる
突き出された粗末な槍が
剣速といい切れ味といい
瞬く間に十匹余りの
「どんなに大きくても同じさ!」
やはりおかしい。彼は自信家ではあっても相手を甘く見るような人ではない、ましてや強大な相手を前に武を
ただその自信は根拠の無いものではなかった。左手に握った剣で棍棒を鮮やかに受け流し、返す一刀で丸太のような腕を斬り飛ばす。振り上げられた足を半ば両断し、正面から腹部を深々と切り裂く。
だがそれは左手に握った剣に引きずられるような動き。凄まじい剣の冴えとは対照的に素人のような
彼にそれを隠す気はないのだろう、私も今更ながらに問わずにはいられなかった。
「エクトール君、あなた左利きだった……?」
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