左利きのエクトール(一)
春の花々がその役目を終え、勢いよく伸びた
だがそれは妖魔や野盗の動きが活発になることを意味してもいる。
「ポタ村が全滅……?」
昨年エクトール君が拠点化したところに私が合流し、無傷で
「少々お待ちください」
窓口の
とはいえこのような勇者からの
だがそこは私のことだ。乗合馬車など使わず走れば良い、食事つきの宿など使わず相部屋に素泊まりで良い。そうしてたどり着いたポタ村の様子は……
「そんな……」
崩れた土塁、砕け散った柵、焼け落ちた家、エクトール君や村の人達と協力して作り上げた設備ばかりか村そのものが跡形もなく破壊されていた。一緒に武器庫を作った大工のリベラさん、自警団に参加してくれた
その時、形をとどめている家の陰で人影が動いた。村の生き残りがいたのか、それとも……
街道を
「
どうやらポタ村が全滅したという噂は間違いではなかったようだ。だが昨年拠点化されたこの村は
そう考えた私が向かったのは、ポタ村から最も近いチャクシェという町。さすがに二千余りの人口を抱えるこの町は無事だったようだが、南北それぞれの入口は槍を持った兵士さんが厳重に警戒している。
重苦しい雰囲気が町を覆っているのは重く垂れこめた雨雲のためだけではなく、ポタ村を襲った妖魔に
「まだ日陰に雪が残っていたので、四十日ほど前だったと思います……」
顔や手に生々しい傷が残るソダさんの話では、ポタ村はまだ残雪が解けきらない頃、妖魔の群れの襲撃を受けて全滅したという。
あの日
「またペイルジャック……」
どうやらその妖魔には心当たりがある。大討伐やラウドルック遺跡探索の際に遭遇した
ソダさんと別れた私は、ロッドベリーに帰る道中で考えを巡らせた。
そもそもロッドベリー砦の南側は私達
もしペイルジャックがポタ村に残っているならば奪還は現実的ではないし、奪還したところで生き残った村人が少なすぎて住む人がいない。そのあたりは行政府が判断するとして、私はどう行動すべきか。まずはこの事実をあの子に伝えて……あとは考えてもらおうと、私はちょっと甘えた結論を出した。
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