魔人ペイルジャックと魔女の夢(三)
ジェダさんとラドカスさん、アリスタさんと私はつい先日、
「お久しぶりです! お二人も探索ですか?」
「あ、ああ……」
私が笑顔と明るい声で機先を制したのは考え無しの阿呆だからではない、決して。
このような場所で出会う人に探索以外の目的があるわけがない、そのくらいは分かる。今は何よりもこちらが友好的であることを示すのが先決、そう思ったのだ。何しろここは人目の届かぬ地下空間、
「良かったらご一緒しませんか? 私、こういうの初めてなので怖くって」
前と後ろの双方から戸惑いの気配が伝わってくる。それはそうだ、先日別れたばかりの四人なのだから。
でも提案としては悪くないと思う。あちらは剣士二人が
半刻ごとに先頭と最後尾を私とラドカスさんで入れ替わり、そのたびに休憩を挟んで進む。これだけでもずいぶんと負担が減ったものだ、遺跡探索は複数人が基本だという理由がよく分かる。
「最近見つかった
「誰でも
「
「ジェダの奴が使うか、売っ
やはり気まずいのかほとんど口を利かないジェダさんとアリスタさん、対照的によく
「止まれ。誰か来る」
そのラドカスさんが先頭の時に遭遇したのは、また別の
「つまり
アリスタさんが軽蔑したように言う。このような遺跡を探索することもあるが、大抵は墓荒らしであったり戦場で
「ひええええ……」
「な、俺達と一緒で良かっただろ?」
得意げに片目を
その音に気付いたのは私が先頭の時だった。遠くで響く金属音、乱れた足音、それに複数の怒声。
「何者かが戦闘中のようです。先行します」
言い置いて駆け出し、すぐに後ろの三人が私に続く。音を頼りに通路を右に折れると、大きな空間から
先程の
「やめてください! いくら
私の声に動きを止めた者もいたが、なんだ女かとばかり再び剣戟に身を投じる。もう一度声を限りに叫ぼうと思ったところを制したのは、今まで機嫌悪そうに押し黙っていたジェダさんだった。
「ロッドベリー市認定勇者のジェダだ! 双方剣を収めろ、これ以上の争いは俺が認めない!」
威厳に満ちた声、真剣な
「な、何だ……?」
呆然とするジェダさんの視線の先で、一人の男が血濡れた剣を犠牲者の腹から引き抜いて
「いいや認めぬ。血を流せ、
戦慄のあまり誰もが思考を止める中、その男だけがゆるりと動いた。流麗とさえ思えるその剣舞のうちに人の首が二つ宙に舞う。絶叫と悲鳴が噴き上がる中、男は降り注ぐ血を浴びて恍惚の笑みを浮かべた。
「だ、誰だ? いや、何だこいつは……」
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