魔人ペイルジャックと魔女の夢(一)
ロッドベリー市行政府二階南側、朝日が
「うーん……」
私が変な
理由はわかっている。『大討伐』とその下準備でロッドベリー砦周辺の妖魔が激減したからだ。彼らは数匹から十数匹程度の少数で城塞群の隙間を抜けて
『大討伐』で数を減らしたこの時期の彼らは息を潜めて繁殖や子育てに専念しており、軽率に町や村を襲ったりはしない。これはもちろん良い事なのだけれど、私達勇者にとってはそれらしい仕事が無くなることも意味している。ゆえに私のような新米勇者は酒場の
さて今日はどうしよう。
「あら、良い子ちゃんじゃない。お元気?」
「あ! アリスタさん!」
とんがり帽子に古木の杖、黒地に赤の刺繍入り
「どうも。どうやらお仕事をお探し?」
「ええっと、そんな感じです」
「ふうん……」
私の顔を見回し、次いで列に並ぶおじさん達を見回して何か言いたげな様子。なんだか居心地が悪くなった私は話題を変えることにした。
「今日はお一人なんですか? ジェダさん達は?」
「別れちゃった。たっぷりお金入ったし、もういいかなって」
「えええええ!? そんなぁ!」
アリスタさんは『あっけらかん』としか言いようのない表情で、おまけに両手を振って言い捨てた。つい先日まで一緒だった三人組が、もしかして私のせいで気まずくなってしまったのだろうか。ロッドベリー市が誇る勇者一行が解散する原因を作ってしまったとしたら、もう誰と誰と誰に謝ればいいのかわからない。
「アンタを見て思い出しちゃった。恥ずかしい言葉で『夢』ってやつ」
「え? 私を!? 夢?」
「そ。責任取りなさいよね」
「意味わかんないです!」
次第に混んできた土木課の待合室で立ったまま話を聞くと、どうやら彼女が言う『責任を取る』とは一緒に遺跡の探索に向かうことを指しているらしい。何でもロッドベリー市近郊の遺跡に複数の
季節的に手
「お仕事を探していたんでしょう? アタシが雇ってあげる」
「でも私には遺跡探索の技術なんかありませんし、弱いのも知ってますよね!?」
「いいのよ、私の盾にさえなってくれれば。一日一万ペタ、諸経費はこちら持ち。どうかしら?」
「うっ……」
他の仕事なら
などと私はまだ心を決めかねていたというのに、年齢不詳の魔女は強引だった。
「決まりね。早速出発するわ、用意しなさい」
どうやら私には選択肢など与えられていないようだ。魔女はひとつ顎をしゃくると、使い魔がついて来るのは当然とばかりに歩き出す。
この通り最初から私は乗り気ではなかった、お金に困っていたところに一日一万ペタという好条件を提示されて心が傾いてしまったのだ。それがまさかあんなものに出くわすなんて、私はどこで運命の女神様に嫌われてしまったのだろうか。
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