勇者のかたち(十二)
この小さな集落では毎晩のように
黒い
「しまった! 外した!?」
夜空に浮かぶ妖魔は奇声を上げて飛び回り、頭上に出現させた光の矢を投げつけた。藁屋根を貫き壁を
民家の軒先に身を隠しつつ妖魔の姿を探すが、上を見上げれば後ろから現れ、後ろを警戒すれば上空から現れて
「やるしかないか……」
やはり覚悟を決めるしかないか。
私もそれを用意してある。ただ覚悟が必要なだけだ、痛みに耐える覚悟が。
私は
来た。真後ろ上空で微かな羽音、その場で力を集中する気配。身を硬くして待つこと数瞬、背中に衝撃が走った。【
「見つけた!」
これが私の次善策。攻撃魔法に耐えて相手の位置を特定、振り向きざまに
名前のない集落での小さな勝利。老人ばかり二十名ほど、素朴な料理と安物のお酒を持ち寄ってのささやかな酒宴。報酬も無ければ評価も上がらない、でもここにあるのは心からの感謝と誰かの笑顔。私が一番守りたかったもの。
「お嬢ちゃんはすごいな! 立派な勇者になれよ!」
「何言ってんのさ、リナちゃんはもう立派な勇者じゃないの。私達にとっては一番の勇者様だよ」
「えへへ、ありがとうございます。頑張ります」
じゃがいもと豆の煮物、
幾日かが過ぎた昼下がり。行政府の待合室でローラばあちゃんとお土産の貝
報酬を受け取り広報課の取材に応えるジェダさん達から離れて歩いてきたのはアリスタさん、年齢不詳の魔女。
「あら、美味しそうじゃない。私にも頂けるかしら?」
「どうぞ。あの集落で頂きました」
「ふうん……いい顔ね。何か掴んだのかしら?」
「はい! おかげさまで!」
もぐもぐと口を動かすたびに優しい甘みが広がる。これが私の報酬だと胸を張って言える。これが私の
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