勇者のかたち(五)
「ありがとうございます!」
白い土壁、黒
二階南側にある危機管理課の窓口にて『
「帰宅するのは待ってもらえますか? ちょっとこちらへ」
「あー、勇者リナレスカさん、こちらの資料をご覧ください」
そう言って見せられたのはロッドベリー市が認定した勇者に関する資料で、私の活動内容を記録した
累計討伐数 三、共同討伐数 十四。
累計討伐数とは文字通り単独で妖魔を倒した数のことで、共同討伐というのは複数人で協力して妖魔を倒した場合に負傷させるなど大きな貢献をした際に加算される数のこと。
今まであまり気にしていなかったけれど、私は直接この手で妖魔を倒したことは多くない。勇者に認定される前は
「この累計討伐数三というのは極めて少なく、このままでは勇者としての資質に疑問を持たざるを得ません。今後の待遇にも関わりますのでご留意ください」
そう。私達勇者は百日ごとに俸給を頂いていて、功績次第では増額を期待できる反面、成績が悪ければ最悪の場合は認定取り消しも有り得る。つまりクビだ。
討伐数をもってその人の評価とする方法に疑問はあるし、私なりに一生懸命活動してきたつもりだけれど、確かに私の討伐数は少ない。勇者にとって人に害を為す妖魔を討伐するというのはやはり重要な仕事なのだ。
「……わかりました」
俸給を受け取ったというのに沈んだ気分のまま行政府を出ると、つむじ風が街路の落ち葉をさらっていった。木枯らしの季節にはまだ早いというのに、胸の中にまで隙間風が吹くようだ。
「リナレスカさん、ちょっといいかな」
その声に顔を上げると、落葉色の
「この前僕が生意気なことを言ったからだと思います。巻き込んでしまって申し訳ありません」
中通りの喫茶店に腰を落ち着けると、彼は注文した
この前というのはポタ村の妖魔討伐を報告した際、危機管理課の課長さんに評価方法や市としての対応について意見を述べたことを言っているのだろう。
「エクトール君は悪くないよ! 私だって言いたい事たくさんあったもの。なんか頭にくるよね!」
我ながら
「評価の方法については全く納得できません。ですが僕らがロッドベリー市の勇者である以上、どれほど愚かな規則であろうとも従わなければなりません」
あ。この子、可愛い顔して結構毒を持ってる。それもそうだね、と返した私の顔をちらりと見てテーブルの上で軽く手を組む。私よりも小さくて白い、剣を持つのが似合いそうもない繊細な手だ。
「リナレスカさん、また一緒に依頼を受けませんか? どうやら
うん! と良い返事をした私はエクトール君と一緒に行政府に引き返し、一つの依頼を引き受けた。
農村にて家畜を襲う
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます