大樹海の大討伐(七)
魔人ペイルジャック。
だが
二十合、三十合、私が到着してからの僅かな時間でさえそれほど剣と剣が交差している。このままいつまでも決着がつかないのではないか。私だけでなく、この戦いを見守る勇者達もそんな思いに駆られていることだろう。
不意に魔人が五歩の距離を飛び
「我が内なる生命の精霊、来たりて不可視の盾となれ……【
白く輝く障壁でそれを
「ふふふ、これは思わぬ拾い物。白と黒のみでは少々物足りぬところよ」
雨中の死闘はなおも続く。
「一つ貸しだ、
「ああ、感謝する」
「貸し借り無しだ、
「ふん」
いつ果てるともない戦いに疲労を
「悪くない。悪くないぞ、
人と魔のいずれが
リージュが放った光の矢がペイルジャックの障壁を突き破り、その胸板に弾ける。
地面を転がり水溜まりの中で横倒しになった魔人の首。しかしそれはなおも口を開き、言葉を紡ぎ出した。
「良いぞ、良いぞ。白に黒に銀、
あまりにも不吉な声、不穏な言葉。だが白き勇者の聖剣がそれを断ち切った。
「滅!」
赤と茶色の水飛沫。泥の中に沈んだ頭部も、それを失った胴体もぐずぐずと地に溶けてしまい、後には何も残らなかった。
なおも降りしきる雷雨の中、雨具に身を包んで帰途につく勇者の列。
みな一様に肩を落とし
彼らの中で声をひそめて語られる魔人ペイルジャック。呪いの言葉を残して消えたあの妖魔が滅されたとは、誰も思わなかった。
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