大樹海の大討伐(四)
「天に
リージュが掲げる杖から白く輝く光の矢が放射状に放たれ、三匹の妖魔が一度に倒れ伏した。
「お嬢ちゃん、張り切りすぎだ。一度戻ろうぜ」
「いいえ、まだ行けます。これでも魔力を温存しているんですから」
「そうかい、俺は疲れたから休ませてもらうぜ。おい、水をくれ」
「あ、はい」
倒木に腰を下ろした
「その杖、
「え? ええ、そうです」
「何て名前だ?」
「『
「ふうん、聞いたことがねえな。最近手に入れたのか?」
「はい。遺跡に安置されていたので、今まで世に出ていなかったのだと思います」
「そうかい。効果と
「習得していないものも含めて全ての魔法を使えるようになることと魔力の大幅な向上、
「
「……」
リージュは無言のまま
「そういえば、
「さあな」
「なんで教えてくれないんですか!」
「わざわざ自分の弱点を明かす奴がいるか、阿呆」
いつも通りの憎まれ口に頬を膨らませる私だったが、実はこれは予想通りの返答だった。この人の補佐として勤めた二年間にも教えてくれなかったことを今さら明かすとは思えない、少しでも長くリージュを休ませるための雑談だ。
中身の乏しい会話を続ける私達の耳に、やや遠くからの破裂音と悲鳴が届いた。ここで待てという
周りからも複数の足音が聞こえる、鎧を鳴らす音が響く。近くの勇者達が集まってきたのだろう、その前に姿を現したのは……
異様な外見だ。
「こいつは……ペイルジャック!」
ペイルジャック? 私は聞いたことのない名前の妖魔を目を細めて観察した。
「魔人ペイルジャック。
教えてくれたのはリージュ、彼女の声もまた緊張を
「くそっ、何だこいつは! 手を出すな、包囲しろ!」
歴戦の勇者達もすぐに敵の力量を悟ったようだ。だが妖魔は私達の言葉とは異なる詠唱で巨大な火球を
「おい、
「はい!」
条件反射。だが手で口を塞ぐ間もなく、
「
「で、でも……」
私は
「行って、リナちゃん。おまじないをあげる」
【
でも草原を一人駆けるような開放感は無い、道の果てまで駆けていこうという胸の高鳴りも無い。ただ師と友の運命がこの足に懸かっている、その重圧がのしかかるだけ。どれほど速く駆けようとも焦りが
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