大樹海の大討伐(二)
この『大討伐』に際して国外から派遣されてきた勇者はピエニ神聖王国から十八名、南方都市国家群から十二名、その他地域から七名。
彼らはイスマール侯国に比べて人数こそ少ないものの、名だたる勇者が顔を揃えている。中でも
ようやく目が覚めたのか、
「お招き頂き光栄に存じます、ピエニ神聖王国のアリオスです。各国の勇者を代表してご挨拶させて頂きます……」
この人が『
その体躯、その声量、その存在感、私はこの人から目が離せなくなってしまった。立派な体格だけでなく伸ばした背筋に堂々とした立ち居振る舞い、まるで内側から放たれる聖なる光を隠しきれていないかのようだ。
加えて挨拶も簡潔でわかりやすく、メルモーゼ司令官の十分の一の時間で終わったにもかかわらず内容が充実していて退屈も覚えず、私も
最後になんとか卿の音頭で乾杯を済ませ、ようやく目の前に並べられていた料理に手を付けることを許された。
「お酒とお肉ばかりだと体に悪いですよ。ちゃんと野菜も食べてください」
「うるせえな。明日には地獄行きかもしれねえんだ、好きなもん食わせろ」
「明日生き残るためにちゃんと食えって、私の尊敬する師匠が言ってましたけど?」
「どこのどいつだ、そんなくだらねえこと教えたのは」
などと愚にもつかないことを言い合う私達の近くで、あの『
「失礼、リナレスカさんだね? ピエニ神聖王国のアリオスだ、よろしく」
「ふぁい!?」
口いっぱいにスパゲッティを詰め込んでいた私は、すぐ隣で
「ど、どうも、リナレスカです! ええと、お会いできて光栄です!」
口元にトマトソースを付けたまま直立不動で敬礼する私に対して、爽やかな微笑を浮かべるアリオスさん。こうして間近で見るとさらに大きくて力強くてものすごい存在感、それにお顔も体も彫刻のように完璧だ。外見だけでも神話から抜け出してきたようなのに、さらに握手を交わすとその手の大きさと分厚さに圧倒されてしまった。
「よう、
「これは
「こっち来て飲めよ。堅苦しい挨拶ばかりじゃ肩が凝っちまうだろ」
「ははは、
「ちっ、相変わらずお
私は口を開けた間抜けな表情のまま固まってしまった。
「ふう……びっくりしたぁ」
思わぬ大物と遭遇してしまった動揺を鎮めるため、開け放たれていた大窓から
「ひいいいい!?」
「何だ、やかましい」
迷惑そうな表情と迷惑そうな声で私を
深紅の液体を満たしたグラスを手にする姿は絵になるけれど、怖い。存在感が圧倒的すぎて怖い。月下に美女の血を
「ご、ごめんなさい! 失礼しました!」
自席に戻った私は気持ちを落ち着かせるために残った
「いい飲みっぷりじゃねえか。ところで
「し、知りません。そんな人知りません」
黒一色の姿、ただならぬ存在感、たぶんあの人だと思う。でもまた間近であんな威圧感を放たれたら泡を吹いて倒れてしまう。私はできるだけ小さくなって、両手に持ったグラスから
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