叡知の杖(四)
「これは……
「そうだ。俺達が倒した」
噂に聞いたことがある、これが
手近の岩をごろりと足で転がしてみると、意外と可愛らしい目と口の模様が刻まれていて急に可哀想に思えてしまった。慌てて拾い上げて胴体の上に乗せてあげる。
岩の残骸を横目に通路を進み、いくつかの分かれ道を迷わずに進んだザックさんは、「この奥だ」と言って金属製の両開きの扉の前で足を止めた。
「この奥の部屋にミルカを
その声に息を呑む。腰の後ろから小剣を抜いたけれど、こんなものが岩石の身体に通じるとは思えない。ザックさんはといえば直剣の代わりに長柄の
「いくぞ!」
ザックさんを先頭に踏み込んだのは、綺麗に石材をはめ込まれた十数歩四方の部屋。中には書棚といくつかの調度品、そして……重々しい
「天に
リージュの杖から撃ち出された三条の光が
「わ、私だって!」
ついでに飛び込んだ私も小剣を突き立ててみるが、文字通り刃が立たない。僅かに欠片を散らしただけで終わったところに岩でできた拳が振り下ろされ、慌てて地面に転がり難を逃れる。
質量を持った高速の光を放つ【
やはりと言うべきか私は何の役にも立たない。この場に勇者の称号を持つ者は私だけだというのに情けない、情けないけれど、今私にできることを為さなければならない。私は杖を構えるリージュの前で小剣を鞘に納め、
やがて重々しい響きを立てて
その中でザックさんが歩み寄ったのは、床に残されていたミルカさんの遺体ではなかった。いくつかの調度品にまぎれて壁に掛けられていた白銀色の杖、それを手に取った男は低く
「ふふふ……これだ、間違いない」
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