第二章 凡才勇者と秀才補佐
凡才勇者と秀才補佐(一)
イスマール侯国北方の中核都市、ロッドベリー市で『勇者』の称号を授かって半年。
『勇者』である私はこの地域において宿泊・食事・装備品の提供や割引、有力者への謁見、軍事施設への立入や滞在など様々な恩恵を受けることができる。
……だからといって、必ずしもそれは生活の安定を意味しない。市から頂ける俸給は百日ごとに三十万ペタ、宿泊・食事等の割引率は三割。これと妖魔討伐の報酬だけでは生活できず、勇者の中には他の仕事を掛け持ちする者もいる。
もちろん
そして今日は水路のどぶ
「リナレスカです! 以前からお願いしてあった件で参りました!」
その声を受けて窓口に現れたのは若い男性の職員さん。面倒くさそうな態度で資料の
「ああ、昼に来てますね」
「ほんとですか!?」
大きすぎる声に職員さんは露骨に嫌そうな顔をしたが、気にしないことに決めた。そんな事より何より、私にとうとう仲間ができるかもしれないのだ。
この窓口では様々な町村や団体から来る勇者の派遣依頼を扱っている。付近に棲みついた妖魔の討伐というものが多いが、他には隊商の護衛、山賊団の退治、中には遺跡や未開の地への探索に同行するなど変わったものもある。これらを完遂すれば依頼元から報酬がもらえるし、評価が上がれば依頼主から指名されたり俸給の増額につながる。
勇者という仕事は信用が命、ある意味で人気商売とも言えるのだ。……自分がなってからこの現実を知ったのだけれど。
そして私のような新米勇者には、
だから駄目で元々と活動を補佐してくれる人を探してもらっていたのだけれど、五十日が経ってようやく応募者が現れたというのだ。それも若い女性の魔術師だという。私は二つ返事で即日の面会を希望した、そして……
「リージュです。国立魔法学校の卒業生で、多少魔法が使えます。あの、あまりお役に立てないかもしれませんが、私でよろしければ……」
「ありがとうリージュちゃん! 私リナレスカ、よろしくね!」
リージュちゃんの挨拶が終わらないうちに、思わず両手で小さなお手々を握ってしまった。
年の頃は十八歳になったばかりの私より少し下だろうか。お人形さんのように細くて小さな体、ぱっちりした金色の目が隠れてしまいそうなほど長い銀髪、控え目な物言い、なんて可愛らしいんだろう。しかも噂では一万人に一人しかいないと言われる魔術師だなんて、私みたいな新米勇者にはもったいなさすぎる。仲良くできるといいな……
などとこの時、私はお気楽なことを考えていたのだ。いずれ私達に訪れる数奇な運命など
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