アイサ村の模倣魔人(三)
目の前には直剣を両手に構えた老人……の姿をした
だから仮にも軍隊で基礎訓練を積んだことがある私が苦戦してしまうのは、気持ちの問題。自分が傷つくのも相手を傷つけるのも怖くて、命のやり取りが恐ろしくて、致命的な間合いまで踏み込めないだけだ。
「ううっ……」
老人が急にうずくまり、お腹を押さえて
お爺ちゃん大丈夫? とつい声をかけてしまいそうな状況だけれど、いくら私でもそこまでの
つまり……覚悟は決まった。私は怒っている、こいつは絶対許さない!
「私を……人を馬鹿にするなあっ!」
自慢の足で思い切り地を蹴って間合いに飛び込む。突然の私の行動に驚いたのかやや反応が遅れた老人、だがその手にした剣が突き出される。刀身の短い小剣で正面から突き合えば勝ち目は無いけれど、そこまで馬鹿じゃない。
横跳びに身を
「や……やった! やりましたよ!」
これは勇者リナレスカの記念すべき初勝利かもしれない! と小躍りする私の横では、本物の勇者が本物の戦いを繰り広げていた。
「じゃあ黙ってそこで見とけ!」
攻撃魔法が消滅した? 世の中には様々な効果を付与された『
間髪入れず飛び込んだ男に
これが本物の勇者の戦い。とても
でも、もしあの
「ええい!」
手近の石を拾い上げ、思い切り投げつけた。それは狙い違わず
それはそうだ。こんなもので
「ひえええええ!」
「黙って見とけって言ったろ!」
やっぱりやめとけば良かった! 一歩、いや半歩間違えば勇者リナレスカの冒険はここで終わってしまっていた。
……私が阿呆みたいに口を半開きにして見守る中、やがて決着はついた。
巧妙な作戦で足裏と膝を傷つけて機動力を奪った勇者は最後まで優勢を譲らず、時間と少々の手傷を必要としたものの、見事に
「ったく、余計な真似しやがって」
「ごめんなさい……」
だが軍の
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