アイサ村の模倣魔人(二)
村はずれの森に入っていく老女を追って、私達も森の中に足を踏み入れる。
その老女は腰が曲がっている割にやけに足が速く、倒木や窪地に阻まれているはずの獣道を小走りで危なげなく駆け抜けていく。おまけにほとんど後ろを振り返ることもない、確かに彼らは私達ほどの知性を持ってはいないようだ。
「ご苦労。
やがて木々の向こうに古い狩猟小屋を見つけると、
草の上に転がるのっぺりとした白い頭部、老女の衣服を着た軟質の身体。やはりこの人も
ここまで来ると私の
「
中を
「うええええ……」
「それは拒否か? 承諾か? はっきりしろ」
「わかりましたぁ……」
この人が十分な準備をしていないとは思えない。でもたった二人で、それも大して役に立たない私と一緒で何とかできるような相手なのだろうか。だがそんな私の思いをよそに淡々と準備を進める姿を見て、やるしかないと覚悟を決めた。
やがて小屋が黒煙に包まれた。ぱちぱちと爆ぜる音、赤く黄色く揺らめく炎。これほど火の回りが早いのは
激しい物音がして、まず飛び出してきたのは
そしてその獲物、
思っていたのと違ったのはその大きさ。中背の
……のだけれど、この人にはまともに戦うつもりなど無かったようだ。入口付近に撒かれた鉄製の突起物を踏みつけ、激痛でよろめいたところに長剣で痛烈な一撃。膝口の骨を砕いたようだ。
「おい。一匹行ったぞ、逃すなよ」
「うええええっ!?」
声にならない
老年男性の姿をしているけれど、私に向き直り剣を抜く動作は老人のそれじゃない。どこを見ているのかわからない目、緩やかに開かれた口、
「私でもやれるかな……」
実戦経験が無いわけじゃない。乱戦の中で
でも、そのどちらも相手に手傷を負わせることはできなかった。臆病者同士が威嚇し合って軽く剣先を合わせ、互いに逃げ出しただけだ。
今はどうだろう? 目の前の
「ううん、やってやる! 私は勇者になるんだから!」
右手に小剣を握り締め、下腹に力を込め、硬い地面を蹴って間合いを詰める。自然に気合の声が漏れる。
「やああっ!」
甲高い金属音が一度、二度、三度。ただそれだけで私は大汗をかいて呼吸を乱してしまった。
だめだ、腰が引けちゃってる。勇者になるどころじゃない、剣術の基礎を教えてくれたジョン小隊長が苦笑いして両手を広げる
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