第3話 少し訳アリになった理由(3)

中学2・3年の時に私の人生は狂ってしまった。自信を持って声に出して言える。

毎晩毎晩、自分がおかれている状況について自分自身を責め、声を殺し頬を濡らすほど泣き晴らし疲れて寝むる。そんな日々の繰り返しだった。


中学二年生に進級し、親友とはクラスが離れてしまい早速友達作りに不安を感じたが

思いのほかすぐに友達ができた。いわゆるオシャレ系女子Aちゃん。最初の席が近かったため仲良くなった。その子は陽キャなタイプではなかったが、可愛くて美意識が高くてイケメン彼氏もいて、友達がある程度いる。

「こういう子から嫌われたら人生の終わりだ、、」

私は早々に察した。だからこそ「優しくてノリがいい子」を演じなければ。

Aちゃんと仲良くなるため。いや、嫌われないため。

私は休み時間の度にAちゃんの所に行き雑談をし、一緒にトイレに行って髪を整えるというのを繰り返した。実を言えば会話が途切れる事も度々あったが、そういう時は脳内フル回転し死ぬ気で話題を絞り出し会話を繋いでいった。

頑張っていたから嫌われてないと思った。あの日までは。

5月のある日。いつもの朝。教室に入っていつものようにAちゃんに「おはよー!」と挨拶した。しかし、返事は返ってこなかった。(、、聞こえなかったんかな?)

そう思いたかった。改めて近くに行って挨拶をしたが返ってきたのは

「あ、、、おはよ、、」だ。(やっぱり無視だったんだ)私はすぐに理解できた。

いつもは笑顔で駆け寄ってくれたのに、この日は無表情で距離をとってきた。隣にいたAちゃんの取り巻きもを犯罪者を見るような目だった。

「頑張っても嫌われる。」私はすぐに人生の終わりを察した。


それから数日。昼休みに担任から呼び出された。「聞きたいことがある」と。

このパターンだいたい悪口言われてるとかだ。軽い気持ちで予想を立てていた。

しかし残念ながらその予想は的中した。まず先生から切り出されたのは

先生「ゆるさん。誰かから悪口言われてるとかある?」

私 「いやぁ~ちょっとわかんないですね、、」

先生「実はある情報で、ゆるさんが悪口や仲間外れされていたり裏で笑われてるって 

   情報があるんだよね。心当たりない?」

私 「いやぁ~無いですね。」

私は終始笑顔だった。言われてます・あります・いじめられてますって訴えるべきだとは死ぬほどわかってた。わかっていたけど昔から「訴えたら恨まれる」という紐が頭の中で頑固に結びついていたから、言葉にできなかった。

私がいじめられていると先生に訴えていたのは、一度委員会が一緒になって仲良くなった子だった。「ゆるの悪口言ってるのが聞こえてきて、内容があまりにも酷かったから先生に言ったんよ。迷惑だったらごめん」とその子は申し訳なさそうに言ってきた。たしかに先生にバレるのは小学校の時から不本意だった。でも、その子が行動を起こしてくれた事が「私にも味方がいるんだ」と思えたから本当にうれしかった。

その日の放課後に、少女B・C・Dが担任に呼び出されていた。私は(こいつらが私の悪口言ってた人だな)と思ったよりも冷静に察していた。でも、たくさん私の悪口を言っていた人はいるはず。Aちゃんとかその取り巻きとか。しかしそいつらはバレずにすんだ。それでは少女B・C・Dについて解説しよう。

Bは私と親友のここあと共通の友達だった。習い事も一緒だったし、朝一緒に登校しているグループのうちの一人で仲良くしていると思っていた。だからこそ嫌われて

悪口いわれているのがわかってショックだった。いつから嫌っていたのか。私に向けられていた日光のような朗らかな笑顔は嘘だったのか。

Cは小学校が同じで部活も同じだった。そいつが悪口を言っていたのはなんとなく心当たりがあった。小学校の時はクラスが同じになったことが無いが、いい噂を聞かなかった。友達経由で一緒に遊んだことはあるが悪口言っていたのが気に入らず深い付き合いはしなかった。しかし中学生になって部活が一緒になり、帰る方向が同じということで何度か誘われて親友と私で帰っていたが、話が合わないと感じ小学校の時同様、深い付き合いはせず、一度も私から誘わなかった。

Dは小学校は違って中一で同じクラスになったが、そいつもいい噂は聞かなかった。別に話した記憶はないし何に悪口いってるのかわからなかったが、中一から私の立ち振る舞いが気に入らなかったのかもしれない。

そいつらから話を聞き終えたのか、放課後の部活中にまた担任に呼び出された。

そして三人が悪口を言っていた事、裏で笑っていた事を認めたと言ってきた。

私は悪口を言われてるのは慣れているから、平気だと思った。

でも、それでも改めて悪口言ってるのがわかり、言ってる人を明確に名指しされていて内容もわかるとやっぱり辛いもんだな。どんどん目の前の景色がうるうるしてきた。今まで夜に流していたのに。この時はさすがに我慢できなかった。

私の様子もよそに、担任は淡々としゃべり続けた。これは生徒指導レベルで私の親にも報告すると告げた時、私はハッとなった。


「私の親に言うのはやめてください!!!!」


私が最も恐れていた事だった。親に知られたら絶対に心配され、その視線に私は絶対に耐えられない。親にバレるのは何とか避けなければ。今にも折れてしまいそうな弱弱しい声を振り絞ってお願いする。

「お願いします、、親に言うのだけは、、」

担任は少し悩んで、学年長に相談すると話しこの場は解散した。

部活に戻ると、パートの皆は合奏に行っていた。私は合奏に行く準備をしながら

落とし穴に落っこちたような喪失感を埋めようと必死だった。周りに悟られないだろうか。自分自身よりも周りがどう思うかが心配だった。その後、部活が一緒のCと部活終わりのミーティングで同じ教室にいたが、Cの事は全く見れなかった。。Cを見ると真っ黒なドロドロしたものが見える、そんな変な気がしたから。きっと私の事を恨んでいるに違いない。私は真っ先に親友に相談して心配されたかった。しかし

ミーティングには親友の姿はなかった。どうやら途中で習い事のため帰ったそうで

仕方なく一人寂しく帰ることにした。(親友はlineやってなかったから、直接じゃないと相談できなかった)


次の日の土曜日。部活を休んだ。夜にあまり寝れなかったため何だか体がだるくて何も考えたくなかった。親に「部活休みたい」というと、すんなり了承してくれた。

あんしんして私は夜の分の眠りについた。睡眠はたくさんとったが、気持ちは晴れなかった。

「目が覚めたら土曜日だったらいいのに」

そんな願いも虚しく月曜日はやってきてしまった。準備をして家を出た勇気は奮い起こした。しかし、何歩か歩いてそんな勇気は何処か行ってしまった。

いじめのことを急に思い出して目の前がまっくらになった。いじめられる事は

慣れているはずなのに、なんで足が震えて歩けないのだろう。心が、放置された廃墟のように寂しく空っぽになっている。


ここから自ら首を吊りたくなるような学校生活が始まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る