第48話 冷鉱泉
川越を出発した彩香は、まず大宮へ行き、そこから熊谷まで移動した。
もうすぐ昼時だが、川越で食べ歩きをしたおかげでまったく空腹を感じない。
だから、あえて昼食はとらないことにした。
熊谷駅で秩父鉄道に乗り換える。
そこからおよそ一時間ほどかけて、次の目的地である
「着いたぁ〜!」
電車が目的の駅に到着したので、すぐに下車する。
無人駅なので、思ったより周囲は閑散としていた。
「……あ! 和同開珎のモニュメントがある!」
興味を惹かれるものを見つけて、駆け寄る彩香。
そこには巨大な和同開珎のモニュメントがあった。
さっそくスマホでモニュメントを撮影する。
ただの記念碑のようなものだが、歴史好きには最高の映えスポットなのだ。
「さすが日本の通貨発祥の地だね」
大昔このあたりの地域では和同開珎の材料となる自然銅が採掘されていたため、ここは日本通貨発祥の地と言われている。
実際、駅周辺には自然銅採掘の歴史を学べる場所が点在しており、徒歩で回れるので歴史や経済に興味のある人にはおすすめだ。
彩香にとっても、ここは絶対に訪れてみたい魅力的な場所だった。
「さてと……まずは温泉かな……」
早く駅周辺を観光したかったが、午前中川越を歩き回って汗をかいているので、先に温泉に入ることにした。
さっそく駅を出て、日帰り入浴のできる施設へ向かう。
スマホの地図を頼りに歩くこと十分ほどで目的の施設に到着した。
「あれだね。どんな温泉なのかな」
施設に入り、受付で入浴料と貸しバスタオルの代金を払う。
それからすぐに女湯に向かった。
脱衣所で手早く服を脱ぎ、浴室へ。
他に入浴客はおらず、実質貸し切り状態だった。
「思ったより普通のお湯かも……」
お湯は無色透明で、特徴的な匂いがするわけではない。
銅の産地に涌く温泉だというから茶色く濁ったお湯を想像していたのだが、実際はごく普通のお湯だったので逆に意表を突かれた感じだ。
もちろん鉄の匂いがするわけでもない。
「ま、いいや。さっそく入ってみよっと」
備え付けのシャワーで体を洗ってから湯船に浸かる。
温度は想像していたよりもぬるく、またもや意表を突かれてしまった。
「あたしにはちょっとぬるく感じるけど、今の時期にはちょうどいいかも……」
ここの温泉の泉質は冷鉱泉。そのため加温をしなければお湯の温度は低く感じるかもしれない。
だが、夏ならこのくらいの温度でちょうどよい気がする。
これなら長くお湯に浸かっていられるだろう。
彩香は完全に脱力した状態でお湯に浸かり、しばらくの間温泉を堪能すると同時に川越観光で疲れた体を癒やすのだった。
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