第五章 天《あま》を翔ける 24

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 皇后マリオンは、沈もうとする夕日を見たまま報告を受けた。

「……そう……」

 悲嘆にくれた瞳を伏しがちにして、彼女は呟いた。スッと手を伸ばして侍女に示すと、侍女は震えながらかしこまりました、と言って下がった。それが合図だった。

 支度ができると、マリオンはまだ赤い空を見ながら杯をとった。

 アナスタシア殿……最後までうらやましい方……。

 彼女は心のなかで呟いた。

 ああでも私はその代わりあの方の動かぬ妻としての座に居座り続けた。一身に愛を受けることができた。人目を憚った事も、気まずい思いをしたこともなかった。

 ならば、あの方の腕の中で死なないくらいのことは、どうというほどのことではないのかもしれない……。あの方の腕のなかで死ねない代わりに、私は堂々とあの方に愛された。あの方の腕のなかでの死こそ、アナスタシア殿にあるべき。

 マリオンは杯を持ち上げると、遥かセレンティの方角に向かってにっこりと笑った。

「ゾラ殿。お先に……」

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