第11話 惑星


下ろされたのは、町の入口。最初にやって来た、駅のすぐ近くであった。

雑踏が、俺を見る。冷ややかな目で俺を見る人も多い。

騒ぎに気付いた警察が、俺に近づいてきている。

そこに花恋が走ってきた。

「ゆっきー!」

「ダメだ、俺に近づくな。お前まで捕まるぞ。」

「私、そんなの関係ないよ。行かないで、ここから消えないで、ゆっきー。」

「大丈夫だ、また会えるさ。」

「噓…」

「約束、覚えてるからさ」

「え?」

警察が来る。

「夜羽雪、だね。あの男の身内という事情を踏まえ、東京まで連行する」

「ひとつ、いいですか」

「なんだね」

「俺は‘‘田中夕季‘‘です。」

「…ふ、くだらん言い訳は後で聞こうか」

警察に拘束される前に、言わなきゃいけないことがある。

後ろ背で、花恋に言う。

「花恋、すごい短い間だったけど、君に会えて楽しかったよ」

「ゆっきー…」

「じゃっ 夏なんで」

「…いつか、二人で聞こう。」

「うん…」


「さ、行こうか。」

そして俺は、警察に連れられ、電車に乗り込んだ。

短い夏の思い出を、ありがとう。阿波根町。

電車が走り出す。

青空が、川のせせらぎが、蝉の音が、遠のいていく。

────今日こそ、世界に平穏を、取り戻せたかな。


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