第8話 白昼夢

翌朝。目覚ましが鳴る。止める。

外では、鳥が鳴いている。声高に朝を告げている。

俺も、起きねば。ベッドから立ち上がり、伸びをして、窓の外を見る。

澄んだ青空が広がっている。きれいだ。

俺は部屋から出ると、一階に降りた。

居間では、いつものように塚原さんと大ちゃんがいた。

昨晩のこともあり、少し気まずい。

「よし、揃ったな。そんじゃ、食おうか。」

「…はい。」

「「「いただきます。」」」

塚原さんは、昨晩のことにはなんにも触れなかった。

食事が終わる。

「ごちそうさまでした。」

「おう。」

居間を出る。今日も学校だ。諸々の支度をして、俺は制服に着替える。

「いってきます。」

「いってらっしゃい。」

玄関から出ていった。

昨日よりは遅い朝。バスに乗る。

そこに花恋が乗り込んでくる。気まずい。

「ゆっきー、おはよー。」

「お、おはよう。花恋。」

他の生徒も何人か乗り込んでくる。

花恋は向かいの席に座る。そしてバスは走り出した。

学校前に到着。バスから降りる。

昇降口に入る。階段を上って2階へ。教室に入る。

チャイムが鳴る。遠峰先生がやって来る。

「おはよー。お前ら、元気してたかー。」

「はーい。」

「よーし。今日も一日シャキッと、キャベツの千切りみたいに行くぞー。」

「は、はーい?」

ホームルームが終わり、授業が始まる。


…昼休み。隣の真鍋から声を掛けられた。

「田中くん、今から僕と図書室に行かないか?」

「え?…いいけど。」

「じゃあ、行こうか。」

なぜか、俺は図書室に行くことになった。

図書室にて。ここは俺と真鍋の二人だけだった。

真鍋は、棚から本を手に取って吟味している。

「君はさ、‘‘本の中に閉じ込められた男‘‘の話って、知ってる?」

「いや、知らない。なんの話なの?」

「昔、或る時、どこかの男が死んだ。

その男は、昔ある本に記されたんだ。自分の間違った姿をね。」

「…?」

「男には親しい知り合いなんて居なかったから、

男は死後、その本の中で語られた‘‘間違った姿‘‘のまま、

後世の人間に嘲笑され、侮蔑されるべき男として‘‘記憶された‘‘んだ。」

「歴史の話…か?」

「いや、そうじゃない。ある‘‘おじいさん‘‘の話だよ。」

「は?…」

「‘‘田中貞郎‘‘さ。僕には聴こえるんだ。彼は何十年経った今でも、

本の中から助けを求めている。」

「‘‘俺の声を聞いて‘‘」

「‘‘本当の俺を読み解いて‘‘…ってね。」

…なんの話だ?…一体。なんか怖くなってきた。

「じゃ、じゃあな。俺、先帰るわ。」

「田中くん、僕は読み解くよ!この本の解読に、僕は一生を捧げるんだ。」

「All apologize.」

…俺は図書室から出ていった。

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