第3話 民宿次元から来た人
町中を走ること10分、俺と塚原さんを乗せた車は、民宿へとやって来た。
「到着だ。ささっ、行こうぜ。」
車から降りると、日本家屋が立っていた。
事前に調べてあったとはいえ、実物を見ると、やはりとてもいい。
玄関の暖簾には、「民宿 なあしさす」と書かれている。
「今日からお世話になります。」
「おう。のびのび過ごしてくれよな。よし、行こうか。」
民宿の暖簾をくぐる。
塚原さんの生活する居間を抜け、階段を上り、二階に来る。
「この部屋だ。元は布団部屋だったが、夕季くん用にチューンナップしといたぜ。」
「あっ…ほんとだ。」
見ると、勉強机、椅子やベッド、それに大量の漫画本を置いた本棚なんかがあった。…おっ。
「ラジカセ…レトロですね。」
「そうか、やっぱ夕季くん世代には大昔のもんかー。これ現役で動くぜ。好きに使ってくれ。」
「はい。何から何まで…ほんとありがとうございます。」
「気にすんな。家(うち)を選んでくれて、こっちも嬉しいよ。」
その後、荷物を置いて、塚原さんに、民宿での過ごし方を教わった。
「さて、今日は長旅で疲れたろ。ぜひとも、家の温泉でリラックスしてくれ!」
「温泉あるんでしたっけね。是非とも入らせていただきます。」
「よしきた、こっちこっち。」
塚原さんが手招きする。ついていくと、浴室の入り口が。
「着替えここだから。何時間でも入っていいぜ。ごゆっくり。」
「何時間はさすがに無理…かな?あっ、夕食は居間に行けばいいんですよね?」
「そうそう。では、拙者、しばし御免。」
「わっかりました。ありがとうございます。」
塚原さんは去っていった。
よし、温泉に入ろう。
浴場の扉を開けると、視界一面に、湯気が舞ってきた。
おお、温泉だ…!早速入ろう。
熱っ。
…湯船に浸かって少しすると、疲れからか、全身の力が抜けていく。
空を眺めながら、俺は目をつぶって思考する。
…ずいぶん遠くまで来たもんだ。でも、ここはいい所だな。
少しの間だけでもいい…ここで静かに暮らさせてくれ。
そう願う。
…しばらくして、俺は温泉から出た。
「ふぅ…」
脱衣所で着替えて、居間に行く。時計を見ると、時刻は夕方5時半だ。
居間では、塚原さんと20代くらいの青年が、食事の準備をしていた。
「お、夕季くん。風呂どうだった?」
「最高でした。」
「そりゃよかった!」
「そちらの方は?」
「ああ。彼、バイトの大道(だいどう)くん。ちょっと前から家で働いてもらってるんよ。」
「よろしく。」
白いタオルを頭に巻いた若者、‘‘大道くん‘‘が、頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
「困ったことあったら、俺や大ちゃんに気軽に聞いてくれ。」
「はい。」
「さて、ちょっと早いけどメシにしようか。」
ぐうぅ~。朝から軽い飯しか食べてなかったからか、腹が鳴った。待ちきれず、座布団に座る。
数分後。
「今日の夕飯のメニューは、‘‘歓迎!ようこそ夕季くん‘‘ということで、阿波根の地魚で揃えてみたぜ!」
あ、鮎の塩焼きだ。おお~、うまそう。
「よし、では、食おうじゃないか。」
「「「いただきまーす。」」」
居間に、野郎三人の声が響いた。
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