第4話 クレープの交換

☆(田所勇気)サイド☆


革命的な事が3つあった。

何をいきなり言っているのかと言われたら元の世界の話だ。

俺が遭遇する現実の大きな3つの出来事。

その1つ目が長富廻の引越しだ。


長富は中学卒業後に直ぐにこの街から出て行ってしまうのだ。

俺は何の情報も得る事が出来ないままこうして2年前に戻るまで2年間、長富廻に出会う事が出来なくなってしまった。

元の世界では長富は何をしているのか。


それは全く分からない。

だけど幸せになっていればそれで良い。

そう思いながら俺は長富と別れた。



それからというもの。

放課後に俺は約束していたので愛に付き合っていた。

愛は何故かかなりニコニコしながら俺を見てくる。

シャーロックホームズの素顔は無くなっていた。

(全くな)とは思うけど。


「ワトソン」

「何だ。ホームズ」

「私に付き合ってくれてありがとうな。幸せだ」

「いくら何でも大袈裟すぎる。.....お前どうした」

「私が素直に感謝しているんだ。受け取れ」


「いやそんな事を言われても」と言いながら俺は苦笑する。

それから俺達はとある場所にやって来た。

それは.....クレープ屋だ。

俺は案内されて来たそのクレープ屋を見つめる。

そうか。


「どうした?ワトソン」

「.....いや。すまない。ちょっと思い出した事があってな」

「そうか?」

「ああ。.....だけど気にしないでくれ。.....何を注文するんだ?」

「私か。.....私は.....チョコクレープが食べたい」

「良いんじゃないか?.....っていうかこの為に俺を呼んだのか?」


「そうだよワトソン。この場所は初めて出来た場所だ。君と一緒に食べたかったからね」と笑顔になって言ってくるホームズ。

俺は赤面しながら頬を掻く。

何だかそう言われると恥ずかしいんだが。


「何だってそんな。.....友人と一緒に来れば良いのに」

「私は君だから一緒に来たかったんだ。.....ダメだったか?」

「そんな事はない。.....ありがとうな。ホームズ」


俺はそう言いながらホームズを笑顔で見る。

するとホームズはニコッとしてから「じゃあ.....早速食べようじゃないか」と張り切り始めた。

意図が分からないが.....俺と一緒にって。

まあでもせっかくだし付き合おうじゃないか。

思いながら俺は苺クレープを注文した。



「ワトソン」

「.....何だ?ホームズ」

「君は.....その。鬱陶しいとか思ったかね?」

「そんな事思うと思うか?.....俺はお前に誘われて楽しいよ」


俺はそう答えながらホームズを見る。

するとホームズは目を細めながら「ありがとう」と言った。

それからベンチに座ってクレープを食べる。

何というか複雑な感情はあるけど。

それは2つ目の大きな出来事を経験するから。


「.....」


ホームズはこうして笑顔で居るが。

もう直ぐしたら俺の前から居なくなる。

外国に.....アメリカに行ってしまう。

そして2度と会えなくなるのだ。

最後にホームズはこう言ってくる。


『私の事は.....忘れてくれたまえ』


何故そう言われるのかが分からないが。

俺はその言葉を受けてショックを受けてしまった。

そして悲しげな日々を過ごす。

だがそんな未来なんぞ変えてやる。

せっかく2年前に戻って来たのだから。


「.....ワトソン?どうした?」

「ああ。いや。何でもないよ。ホームズ」

「そうか。.....その。1つだけお願いがある」

「何だ?」

「君のクレープを食べさせてくれないか」

「.....」


「.....何!!!?!」と俺は数秒考えてから唖然としてしまう。

ホームズは何を言っている!?それは.....間接キスだぞ。

思いながらホームズを見る。

ホームズは「お、美味しそうだから.....な?」と呟く。

赤くなってモジモジしながら。


「バカ言え。俺と同じクレープを買おうぜ」

「勿体無いではないか。一口味見をしたいだけだ」

「.....」

「.....ダメか?」

「しかしそれは.....間接キスになるぞ」

「.....」


「な、な、ならないよ。わ、私は.....君が噛んでない所を噛むから」とキリッとして話した。

俺はその言葉にボッと赤面しながら居たが。

やがてジッと見てくるホームズに(キリがないか)と思い始めた。

そして静かに差し出す。


「全くお前は。.....食い意地がありすぎるぞ」

「あ、ありがとう。そうだな。.....じゃあお礼として私のも食べるか?ワトソン」

「勘弁してくれ。心臓が痛いんだよ既に」

「.....それは何故だ?.....ワトソン」

「な、何故って.....」


ホームズは吸い込まれそうな瞳を上目遣いで向けてくる。

クソッタレめこの美少女め。

俺は思いながら真っ赤になりながらプイッと横を見る。

それから「良いだろう。何でも」と言った。


「.....そ、そうか」

「.....そうだ」

「.....」

「.....」


(気まずいんだが)と考えているとホームズは苺クレープの.....齧ってない所を齧ってから.....何故か口を離してから数秒して俺が既に噛んでいる所を齧った。

俺はまさかの行動に真っ赤になる。

「何をしている!!!?!」と唖然として絶句している。

「あ、ま、間違えた」と言葉を発するホームズ。


「間違えるな.....心臓に悪い」

「え、えへへ」

「いや「えへへ」じゃない.....」


何だってんだコイツ。

普通はそんな間違いはしない。

元の世界ではこんな事に.....ならなかったのにコイツは.....心臓に悪い。

そんな事を考えながら俺は心臓をバクバクさせながらドキドキの時間を過ごす羽目になってしまった。

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