第3話 数十億を経ての奇跡
☆(吉田美奈保)サイド☆
私は田所勇気くんが大好きだと思う。
だからこそ私は必死に勇気にアピールしているのだ。
でも何だか最近は彼が冷たい様な感じがする。
気のせいだろうか?
まあ気のせいかどうか分からないがまあ.....幼馴染だしね。
そんなに気にする事はないと思うけど。
考えながら私は勇気の後ろを付いて行く日々を過ごしていた。
今日は勇気は用事があるという事だ。
なので私は三者面談とかで忙しかったので行けなかった部活に久々に行く。
部活は.....読書部だ。
より正確に言えば読書を嗜む部活と言えるのだが。
私はドアノブを掴む。
すると横から声をかけられた。
「やあ」
「あ。真じゃん」
「何だか元気が無いね。どうしたんだい?」
元部長の草下真(くさもとしん)。
女子であって今は読書部の部長は引退しているおさげ髪の少女。
可愛い方だと思える顔立ちをしている。
私はその彼女に複雑な顔をしながらも「実は」と打ち明けてみる。
それから「そうなんだな」と「うんうん」と納得した真。
そしてニコッとしてくる。
「.....こういうのは根性だね。.....それからエロさだと思う」
「へ.....?!」
「エロさで勝負だ。という事でビッチになったらどうかな」
「そんなメチャクチャな。無理に決まっているよ」
「ダメだねぇ。その根性じゃ奪われるよ?アハハ」
真は私にニヤニヤしてきた。
私はその姿に苦笑いを浮かべながら「もー」と言う。
そして部室に入ろうとしたその時だった。
誰かの視線を感じて横を見た。
そこに銀髪の1年生が立っていた。
こちらをまっすぐにジッと見ている。
「綺麗な子だな」と思えるが.....うん?
「あの。何かご用ですか?」
「.....」
「???」
「.....端的に言います。吉田美奈保先輩。.....勇気先輩に近づかないで下さい」
「.....はい?」
まさかの言葉に数秒考えて私は少しだけムッとした。
「何だその言い方は」と思いながら眉を顰める。
すると「貴方は勇気先輩を不幸にする。だから近付かないで下さい」と更に私に歩み寄って来た。
何だこの人.....失礼だなぁ。
「その。勇気を知っているみたいだけど。貴方誰」
「私は後輩です」
「その勇気の後輩ちゃんが何でそんな事を言うの。いきなり初対面でそれは失礼じゃないかな?」
「.....そうですね。だけど言わせてもらいます。.....私は貴方の未来を知っている」
(み、未来?)
前言撤回.....この子おかしい。
そう思いながら見ていると「おいおい」と声がして私の前に真が出る。
苦笑しながら後輩ちゃんを見た。
「君は確か長富廻さんだね?.....悪いけど私達に何の用事かな。君は.....ずっと不思議な子って認識ではあるけど.....」
「私は2年後の未来を知っているんです。.....吉田美奈保では勇気先輩に釣り合わないんです」
「.....アハハ。失礼極まりないね。私達に対して」
「吉田美奈保さんは勇気先輩を悲しませる。だから離れてほしいです」
私は困惑する。
すると真が「廻さん。取り敢えず.....話をしたい。良いかな」と怒るのを抑えながら手を差し出したがその手を払い除けてから長富さんは去って行く。
私は「?」を浮かべながら真を見た。
真は肩をすくめる。
「まあああいう子だという認識だ。気にする事はないな。不思議子ちゃんだからねぇ。実は学校内でも徐々に有名になっているんだ」
「.....そうなんだね」
長富さんは何であんな事を言ったんだろう。
私はそんな事をしない。
絶対にしないって思える。
失礼だな本当に.....。
私は長富さんの思っている様な股を開く女じゃない。
☆(長富廻)サイド☆
私は2年後の全てを知っている。
勇気先輩と付き合った吉田美奈保により2年後。
その勇気先輩の人生が全て破綻する。
だから私は勇気先輩が悲しむ前に全てを終わらせると決めたのだ。
私は真剣な顔で歩く。
「.....」
朝目が覚めて天国じゃなくて私は記憶を持ったまま何故か2年前に戻っていた。
これを私はチャンスと捉え今に至っている。
勇気先輩が悲しむ人生なんか死んでもゴメンだ。
2年後に私が死んだとしてもだ。
そして今度こそ私は.....勇気先輩に言えなかった事を言う。
思いながら私は廊下を歩いていると。
いきなり同級生の女子に思いっきり水をかけられた。
アレェ?とか言われながらだ。
「ああゴメンねぇ。手が滑った」
「.....」
「いやいやぁ。居るって気が付かなかったからwwwごめんwww」
「別に良い。気にしなくて」
そう言ったのだが私は足を引っ掛けられた。
そして水で滑って転ぶ。
それからゲラゲラ笑われた。
そいつらにだ。
「.....」
2年前に戻ってもこの人達は何も変わってない。
誰も助けてくれないのは2年前と変わらないなって思う。
みんな通行人A、B、Cだ。
思いながら居ると「止めろ」と光が差し込む様な声がした。
私は顔を上げて驚愕する。
いじめっ子達は動揺し始めた。
「だ、誰よ」
「.....田所勇気。.....いやまあ俺の名前なんてどうでも良いけど。.....そいつは俺の大切な後輩なんだ。それ以上やると先生呼ぶぞ。良い加減にしろ」
「.....チッ.....行こうみんな」
そしていじめっ子はバケツを放り投げて去って行く。
私は驚きながら勇気先輩を見た。
何というか元の世界ではあり得なかった光景だ。
そう考えながらいると手を伸ばしてきた勇気先輩。
そうしてから笑みを浮かべた。
「濡れますよ」
「良いから掴め。立たないといけないだろ」
「.....」
私は勇気先輩の手を握ってからそのまま起き上がらせてもらう。
それから「何故ですか」と聞くと勇気先輩は「まあ全ては偶然だな」とだけ答えながら口角を上げて笑みを浮かべた。
私はその姿をジッと見る。
何か違和感があるな。
「勇気先輩.....」
「?」
「.....いや。何でもないです」
そして私は濡れた手を拭きながら勇気先輩を見た。
そのまま保健室に連れて行かれてワケを話して制服を借りてから戻った。
しかしそれは良いとして考える。
(私は.....どうするべきか)と。
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