第2話 シャーロック・ホームズ

何故か知らないがタイムスリップしたのだが。

いきなり何を言ってんだお前は、と思うかもしれない。

だけどこれは事実である。


俺自身が記憶を持って2年前にタイムスリップしたのだ。

全ての光景が2年前になっている。

俺自身は夢でも見ているんじゃ無いかって思ったけど違う様だった。


「.....」


懐かしい教室。懐かしいクラスメイト。

何というか違和感がありすぎる。

俺は中学に通っている中学生という事になっているが実際は高校2年生だった。

だけど今は2年前に戻り中学生に戻ってしまった様だ。

俺は静かに外を見る。


卒業した筈の校舎で.....こんな事になるとはな。

周りは2年前の景色だ。

ここから見渡せば俺が2年後に通っていた筈の高校、北高が見える。


俺はその景色を不思議そうに眺めながら欠伸をして伸びをした。

そうしたら視界が消えた。

というか塞がれた感じだが。

コイツは.....。


「誰かな?」

「.....山田愛(やまだめぐみ)じゃないか」

「いやいやまともに答えるとかアホかね君は。楽しくない」

「お前が馬鹿か。何だよそれ」


そんな言葉を発しながら俺は愛を見る。

長い黒髪にベレー帽を模した髪留めを着けている。

顔も小さくきっと推理が極端とかで無ければモテると思う美少女。


「.....」


俺はそんな愛を見た。

愛は腰に手を当てて「何かね?」的な感じで俺を見てくる。

実は.....卒業し高校生辺りになってからはコイツは外国に行ってしまうのだ。

でも今はタイムスリップをしてしまったのでコイツはここに居る。

それが違和感がありまくりだった。


「にしてもバカとは失礼だね。君は」

「いやいや。誰でも答えれるしな。ジョークを交えて欲しかったみたいだけど」

「そうだな。ワトソンくん。まともに答えたら良くない」

「はいはい」


俺は苦笑しながらホームズを見た。

それから柔和な顔をする。

するとホームズは「時に」と俺に声をかけた。

俺は「?」を浮かべてホームズを見る。

そしてホームズは「放課後暇かね」と聞いてくる。


「どこに行くんだ?」

「推理ゲームが買いたいのだよ。ワトソンくんや」

「そうか。それならまあ付き合おうじゃないか」

「.....へ?」


キョトンとする愛。

何が「へ?」なのか。

思いながらホームズを見る。


するとホームズは「い、いや。そんな簡単に私に良しと言うのは珍しくてね」と俺を見てきた。

何だコイツ?そんなに珍しいか?

女子を誘って放課後に動くのがよ。


「珍しい。君はあくまで『美奈保〜』的な感じだったじゃないか。惚気な感じの」

「.....ああ。成程それか。.....もう止めたんだ。身の為にならないってね」

「そうか.....それは.....」

「?」


ホームズは「だ、だったら私にもチャンスが」と言った。

声が小さく半分しか聞き取れなかった。

何を言ったんだ?


考えながらホームズに「何を言った?」と聞くがホームズからは「内緒に決まっているだろうワトソンくん」と顰めっ面で言われた。

そして俺を見上げて「女子にはナイショが多いのだよ」と人差し指を唇に添えた。

それから笑顔で俺を見てくる。


「ではでは」


そしてホームズは鼻歌混じりで去った。

俺は「???」を浮かべながらその姿を見送る。

「何を言ったんだろうか」と呟いた俺。


そして椅子に腰掛ける。

だがそうしていると催してしまった。

俺は「トイレに行くか」と思い立ち上がる。


「.....ん?トイレはこっちだったっけか?」


しかしまあ2年間で中学の構造を忘れるなんてな。

思いながら俺はトイレにようやっと行き着いてから。

そのままトイレを済ませてから表に出ると長富が立っていた。

後輩であるが。


長富廻(ながとみめぐる)だ。

無表情ながらもそれなりの美少女である。

銀髪をしているサファイアの目をしているハーフの少女だが.....まさか中学卒業で居なくなる長富にも再会できるとはな。

長富は中学を卒業してから早々に何故かこの街から引っ越したからだ。


「長富。どうした?」

「久々ですね。先輩」

「.....?.....久々ってのは何だ?お前には既に何回も会っているじゃないか」

「そうですかね。.....いや違いますよ。約2年ぶりです」

「.....待て。長富。何を言っている。俺はお前とはずっと会っているぞ?現に今もだけどな」


笑顔になる俺。

だが長富は首を振った。

「何というか(今)の話ではないです」と長富は俺を見てきた。


サファイアのその吸い込まれそうな瞳を見る。

というか、え?

俺はビクッとしながら長富を改めて見るが。


長富は「また後で会いましょう。先輩」と言って去って行った。

その背中に「待て!長富!」と声をかけるが彼女は廊下の通行人に紛れて去る。

何だろうかいったい?

今の言葉が気になるのだが。


「.....まさかな。いや。.....そんな訳ないか」


長富も記憶を持ってタイムスリップをしているのか?

いやでも.....違うか。

思いながら首を振って否定する俺。


そして戻ろうと思い踵を返すと「勇気」と声がした。

顔を上げると美奈保がやって来ていた。

笑顔で手を振りながらだが。

俺はその顔に一瞬だけ眉を顰めてから直ぐに表情を戻して反応した。

すると美奈保はこう言ってきた。


「ねえねえ。その。今日の放課後って時間ある?」

「すまないな。時間がない。放課後.....忙しくてな」

「あ、そうなんだ。どういう用事?」

「シャーロック・ホームズに付き合うんだ今日は」

「.....へ?」


「へ?」とまた目をパチクリして声を発してから美奈保は俺を見た。

俺はその様子を見ながら踵を返す。

そしてそのまま教室に戻った。

「ぇえ?待って?!」と慌てる美奈保を置いてだ。

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