第4話

 折角だ。レイドボスの出現が近い事を教えてやるとしよう。

 俺はスマホの音量をMAXにして幻想の終わりと言うシリーズの七番目の作品のウェポン襲来を流す。


 まさにレイドボスの俺にふさわしいBGMだ。


「おい!ダンジョンでBGMなんか流すなよ!モンスターに見付かるだろ!」

「俺じゃねえよ!──てか、コメント欄がなんか無茶苦茶、荒れてね?」


 どうやら、獲物は見付かったらしい。上層部の二層目だから雑魚か慎重なだけか・・・まあ、決まりは決まりだ。

 俺はウェポン襲来を流したまま、他の配信者達に接近する。

 まずは挨拶の代わりにボディブローをぶちかまし、相手の出方を窺うとしよう。

 まずはスマホで配信していない方を狙う。


 骨が砕ける手応えを感じながらボディブローを浴びせた方がバウンドして地面にうずくまる。


「・・・え?あ。お、おい!何を──」


 俺は配信し続ける奴を無視して無言で相方に蹴りを喰らわせて転がす。


「・・・ぬるい。やはり、上層部でコソコソ配信している奴は狩りがいがないな。まあ、今日の目的は達成したか」


 俺はそう言うとビビりながら配信を続ける方を振り返る。


「お、お前、なんなんだよ!?」

「俺はこのダンジョンのレイドボスになった人間だよ。配信を観てなかったらしいな」


 俺はそれだけ言うと少し考える。


「いまからお前に右ストレートを放つ。避けるか、防ぐかしたら見逃してやろう」


 俺はそう言うとゆっくりとボクシングの構えで拳を放つ準備をする。

 その圧に耐えかね、配信していた方が俺に背を向けて逃げ出す。


「所詮は目立ちたがり屋の配信者か・・・無様なもんだ」


 俺はそう言うと逃げ出した配信者目掛けて跳び、予告通りに右ストレートをぶちかます。

 逃げている奴の後頭部を砕く感触があった。恐らくは一生寝たきりか、運が悪くて植物人間行きだろう。

 俺は前のめりに倒れて、だらしなく涎を垂らす配信者のスマホを手にして阿鼻叫喚している動画配信にVサインする。


「今回のレイドボスのデイリー達成。これからもダンジョンに徘徊する配信者を潰して回る。

 それが嫌ならこのダンジョンでの配信を諦めるか、俺をぶっ殺せ。

 それが出来ないなら今日みたいに犠牲者が出る。俺としては挑戦者が出る事の方が望ましいからな。

 満足する戦いが出来るまで続けるつもりだ。俺の配信にも目を向ける事を勧めておく──とは言え、相手が雑魚過ぎた。

 手応えのあるモンスターもぶっ殺して今日は終いにするとしよう。ああ。この配信者の動画はこのままにしておく。

 救助をするか、ダンジョンの餌になるかを配信した方が有名になるだろうからな。

 それではレイドボスからの本日の教訓だ。

 ただの目立ちたがり屋はダンジョンに入る資格なし。街角でインスタでも上げてやがれ」


 俺はそこで言ってから配信者のスマホを投げ捨てるとウェポン襲来を大音量で流しながらモンスターを探しに下層へと降りていく。

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