第43話 森の中の食事で結局皆泣く
森の中のちょっとした広場で作戦会議をすることに。
蛙が皆に告げる。
「ドラゴンは今近くにおらんから、しばらくは安全じゃ。そのうちにまたフラッと戻って来るとは思うが」
それならば――アメリアが元気に魔法のステッキを掲げる。
「腹が減っては戦はできぬと言います――出でよ、テーブルと椅子! 蛙さん狼さんウサウサウサには子供用椅子を!」
ポン、ポン、ポン、ポン、ポン――……ポン、ポン!
「出でよ、真っ白なテーブルクロス!」
ポフン!
……なんか森の中にレストランが出現したみたいになっている……ジーンが若干遠い目に。僕の奥さんになるアメリアは、素敵でぶっ飛んだ人だなぁ……色々規格外。
「出でよ、おにぎり!」
「な、何~~~~! おにぎりケロ~~~~♪♪♪♪♪♪♪ あれ好きケロ~~~~♪♪♪♪♪♪♪ 焼きたらことツナマヨがわしは好きケロ~~~~♪♪♪♪♪♪♪」
乙女チックなキュン顔になる蛙。……気のせいかちょっと二重になっている?
そういえば禁足地でお話ししたあと、お別れの時におにぎりセットを夕食用に出してあげたっけ……アメリアは思わず笑みを浮かべた。
「蛙さん、あの時出した唐揚げと卵焼きも食べます~?」
「おぬしはマジでいいやつじゃ~♡」
この時点で蛙、もう涙目。胸の前でキュッと両手の指を組み合わせている。
ゴクリ……それを見てバリー公爵は喉を鳴らした。
上位精霊の蛙殿をここまで感動させる、唐揚げとは一体……?
「では出でよ、唐揚げ! 味変でフライドチキン! だし巻き卵! 枝豆! 温かい豚汁! キュウリとカブの浅漬け!」
ポン、ポン、ポン、ポン、ポン――……ポン、ポン!
「わーい、うち、フライドチキンは久しぶりだな~」
「天国はここにあった……!」
バリー公爵の部下たちも、蛙と同じく瞳を潤ませた。
ドラゴン退治は危険と隣り合わせ――だからこれが最後の食事になる可能性がある。
護るべき者のために我々はここへ来た。元々ベストは尽くすつもりだったが、こうして夢のようなごちそうを食べて戦いに挑めるなら、ものすごく頑張れそう。
「出でよ、ペットボトルのお茶! そして紙コップ!」
ポン、ポン、ポン、ポン、ポン――……ポン、ポン!
「ウェットティッシュも出て来い! お箸! フォーク!」
ポン、ポン、ポン、ポン、ポン――……ポン、ポン!
「精霊たちには炭酸飲料~♡ グレープ味~♡」
ポムン♪
「では皆さん、いただきましょう~♡」
アメリアが笑顔で皆を促すと、蛙が代表してねぎらった。
「娘~~~~! おぬしは神じゃ~~~~!!!!」
神クラスの精霊から「おぬしは神」と絶賛されている奇跡の女性……‼ どよめく人々。
「イェイ、センキュウ☆」
陽気にダブルピースするアメリア。
返し、軽~……ギャル特有のノリにまだ慣れていないため、若干遠い目になる男性陣……。
* * *
――五分後。
皆、泣いていた。
バリー公爵自ら、隣席の狼とおにぎり同士をぶつけてから食べるパーティスタイルに参加。
おにぎりの具は何派かで議論が無駄に白熱――ジーンはそれを眺めながら、『おにぎりの具で揉めているなんて、なんかこの時間幸せ』としんみりした。
狼がグレープの炭酸飲料を飲み、シュワシュワにびっくりして全身のモコモコ毛並みがパンク状態に爆裂。それが滅茶苦茶良く似合っていたもので、バリー公爵たちが「うふふ」とお上品に笑い。
唐揚げとフライドチキンの魅力にやられ、全員が乙女顔に。
やだもう、キュン死ぬ……♡
そしてウェットティッシュなるものを使ってみたら、油でベタベタになった手指を清潔に拭き取ることができたので、もうトキメキが止まらないバリー公爵率いるオジサン軍団。
そしてトドメの豚汁。
――皆、豚汁を食べたのは初めのはずなのに、なぜか故郷の母を思い出し、涙したという。
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