第11話 アメリア、列車に乗る


 生まれ育った屋敷を出たアメリアは、移動中ずっと瞳を輝かせていた。


 通りを歩いて乗合馬車発着所に向かうのが楽しい。日が段々と昇り、空が明るくなっていくのを見るのが楽しい。出発まで待つのが楽しい。乗合馬車に乗って、知らない人たちと皆で駅に向かうのが楽しい。


 アメリアは美人であるし、女性のひとり旅は危険と隣り合わせであるが、彼女は魔法のステッキを使ってドレスをゼブラ柄にチェンジしていたため、周囲から浮きまくっていた。突き抜けて目立ってしまうと、かえって絡まられないものだ。おかげでナンパされることもなく快適に移動することができた。


 駅には早く着きすぎたので、ベンチに腰かけ、行き交う人たちを眺めて時間を潰した。人間観察をしながら、サンドイッチと紙パックのコーヒー牛乳を魔法のステッキで出し、朝食をとる。


「美味しい~~~~~♡ パンがフワッフワ」


 幸せな食事を終え、ゴミを眺めおろして『どうしようかなぁ~』と考えを巡らせる。――蛙さんはこういったゴミを魔法で別のものに変換すると言っていたけれど。


「そうだ!」


 もらった魔法のステッキには『なんでもギャルっぽい感じに変えられる魔法』も付与されている。


 それならゴミもギャルっぽい品に変えられるかも。まったく違う物質だとNGになりそうなので、近いものに変えてみようかな。


「紙パックのゴミは、可愛いメモ用紙にな~れ♡」


 キラキラキラ~ン♪


「わお、ハートがプリントされたメモ用紙に変化した~♡ あがる~♡」


 アメリア、ご満悦。


 サンドイッチの包装フィルムは少量なので、


「ビーズにな~れ♡」


 キラキラポン♪


 小さいビーズが一個できた♡ わ~い♡


 列車が来たので、切符を見せて乗り込む。


 指定席に腰かけたアメリアは魔法のステッキでメイク道具を出した。


「ラメ~♡ マスカラ~♡ リップはピンクがいいなぁ~♡」


 久々に日本のコスメに触れたせいか、過去の記憶が鮮明によみがえってきた。


 友達のナナちゃんと遊びでメイクをした時のノリになり、日本にいた時もここまではしなかったというくらいの、ものすごくギャルギャルしいメイクになってしまった。


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