リオからの手紙

 “俺に魔法教えてくれてありがとう。じゃあな、ルゥ”


 未だに耳から離れないリオの声。

 目に焼き付くリオの笑顔。


 アイカを異世界に送って、リオが異世界へ行ってから三日が経った。

 私はリオの部屋にずっと閉じこもっていた。


 ……まだ匂いが。


 ベッドに横になってただただあの日を思い出す。


 アイカがいなくなって寂しいけど、リオがいるから大丈夫。そう、思っていたのに。

 リオは私を置いて、アイカと一緒に異世界に行ってしまった。


 どうして、言ってくれなかったのですか?


 分かってます。言われたら止めてました。リオもそれが分かっていたから言わなかった。



 本当は私のこと嫌いだったのですか?


 ふとしたら、そんな嫌なことを考えてしまう。そして、胸が締め付けられて涙が溢れる。


 使用人に迷惑かけてる。もう、出ないと。


 私は、リオの使っていた枕に顔を埋めた。

 ……落ち着く。


「……ん?」


 枕の下に紙が……


「っ!?」


 中にはリオの筆跡で文が書かれていた。



◇◆◇◆◇◆



 ルゥへ


 アイカと一緒にニホンへ行くことにした。勝手に行ってごめん。


 色々と今までありがとう。スラム街で死にそうだった俺を助けてくれてありがとう。

 文字の読み書き教えてくれてありがとう。


 魔法教えてくれてありがとう。


 ルゥの魔法を初めて見たとき、きれいだと思った。だから、どうしても魔法が使いたかった。

 まあ、ルゥみたいに上手くはならなかったけど。


 ルゥは唯一の家族で好きだよ。


 でも、俺は灰眼だから。ルゥに迷惑かけてたの知ってた。

 他の貴族から敬遠されてたろ。俺と一緒にいるせいで、ルゥまで平民から恐れられてただろ。

 ルゥはそんなやつじゃないのにな。


 俺のせいだ。ごめん。


 だから、ニホンに行くよ。今までありがとう。


 リオより



◇◆◇◆◇◆



「ばか……っ、ばかっ、ばか……。誰がいつ、リオが迷惑なんて言ったんですかぁ」


 私の瞳から涙が溢れる。嗚咽が止まらない。


「迷惑なんて一度も思ったことないに決まってるじゃないですかっ」


 ……私のせいだ。もっと、灰眼差別を徹底的に無くすべきだった。

 ごめんなさい、リオ。



 私がこの国を変えよう。

 そして、リオのような灰眼の人たちが普通に暮らせる世の中にする。


 私はベッドから離れて扉を開く。


「る、ルゥ様!もう大丈夫なのですか!?」


 部屋の外で待機していた侍女が後ろから追ってくる。


「ええ、心配かけてすみません。もう大丈夫です」


「も、もう少しお休みになっては?」


「大丈夫です。一刻も早くしなければいけないことができましたので」







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今日もう一話投稿予定です

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