第5話 伍
二人で酒を飲み食事をしていると春が潰れた。
じっくりと味わいながら食事をする。
暫くすると廊下から声がかかる。
「お膳を下げに参りました」
時雨は春が起きないように小さな声で返事をする。襖が開き先ほど身体を洗ってくれた女が入ってきた。
「あらあら」
女は時雨に膝枕をされている春を見てくすくすと笑う。時雨は困ったような表情を浮かべた。
「お蒲団を敷きましょうか」
女の言葉に時雨は春を引き取るように言う。女はきょとんとした表情をした。
「なんですか。 春殿とはそのような関係ではありませんよ。 それに今日はあなたを誘ったではありませんか」
時雨の湯上りの艶やかさに女は顔を赤らめる。女は助っ人を呼んできますと言って膳と共に階下へと降りて行った。
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「おいでなさいな」
時雨は布団の中から横に座っている女に手招きをする。女はゆっくりと時雨の横に滑り込んできた。
時雨の身体から
「さあ、今夜は寝かせませんからね」
時雨は女の口をゆっくりと吸うと女の身体をまさぐり始める。女は小さくも艶っぽい声を上げ始めるのであった。
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「息子さんが行方知れずですか……」
二人の艶やか声の
(ふうん、なんか大変なことになっているようだねぇ。それに普通だったものが急に変わり者になっているということが少し気になるね)
時雨は女の話を聞きながら腕組みをする。その腕の下で何かがもぞもぞと動いている感触が伝わってきた。
「ああ、ごめんごめん。大丈夫」
時雨が腕組みを解くと時雨の胸の間から女が顔を出した。
「もう、苦しいですよ。普通の大きさではないのですから」
ぷんぷんと女は怒ったような甘えたような抗議をする。時雨はその仕草が気に入ったのか同じことを何度も繰り返し女と戯れていた。
「もういっかい……」
二人は見つめ合い口吸いをするともう一度二人で絡み合う。
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朝、時雨は不快な感覚で目を覚ました。身体中がじっとりと汗ばんでいたのだ。それは隣で寝ている女も同じだった。
時雨の軽い動きに女も目を覚ます。二人は見つめ合うと軽く口吸いをする。
しばらくして二人はもぞもぞと着替え始めた。汗で身体が気持ち悪かったからだ。
女が着替えを終わり、仕事に行こうと外へ出るときに時雨は女に声を掛けた。
「5日は滞在するから、その分の請求を頼むと店主に伝えて欲しい。やはりただというのは心苦しい。それとまた、呼んでも良いかな」
女ははにかみながら黙って頷く。
時雨は女を風呂に誘ったが、さすがに仕事があるからと断られた。その代わり、風呂から上がった頃合いに
時雨は風呂の準備をはじめていた。
「時雨様、昨夜は別の女とお楽しみだったようですねっ!」
少し怒気をはらんで入って来たのは春だった。時雨の半裸を見て少し顔を赤らめている。
「あ~、春殿。突然お客の部屋へ入ってくるのは失礼だと思うのだが。それと襖を閉めていただきたい。覗かれているのでな」
時雨の言葉通り、廊下を歩く使用人や滞在客達が時雨の半裸を見ながら歩いて行く。春は慌てて襖を閉める。それと同時に急に入ってきたことを謝罪した。
時雨は昨夜酒を飲んだ春の意識が飛んだことと、女中を口説き落としたこと、その者に罪は無いことを説明する。
そして、春に注意をした。
「昨夜私のお相手をしてくれた女中だが、不当な扱いをしたら春殿を容赦しませんので……」
時雨の言葉に春の顔色が真っ赤になるが時雨は気にしない。
時雨は風呂へ行く用意をして立ち上がった。
「春殿、まだ何か」
時雨の言葉に春は
「ごっ、御迷惑でなければお背中をお流ししようと思って……」
半泣き状態のお春はぷるぷると震えながら言葉を絞り出す。
時雨は少し言い過ぎたかと思うと、にっこりと笑って春の手を取った。
嬉しそうにはにかんだ春の手を引くと時雨は温泉へと出かけていった。
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