第8話 小さな世界

「ねぇ、シュウザー」


「どうしたの?マルギル」



貴方はずっと私を肩にのせているけど、私の力を求めたりしないのね。



「ボクは、マルギルと契約はしているけど友達だと思っているからね」



それに、君は自分の力そんなに使いたいように見えないよ?



そういって、優しく微笑む。



「貴方みたいな、人間ばかりならいいのに」


そういって、マルギルも優しく笑う。



「それに、ボクも母さんが倒れた時に頼る言葉を言う前にマルギルがやっちゃっただけで。ボクだって、祈りが届くならとか力があったなら。そこに手段があったなら、きっと縋りついていたさ」



「そう…、私は悪魔としては失格なのかもね。普通の悪魔なら、そういう縋りたい人間に対してこそ稼ぎ時と思うもの」



私は、シュウザーあいてにそれはちょっと遠慮したいけど。



そういって、二人はあれからもずっとマルギルがシュウザーの肩にずっとのっている。




(闇を解き、屍の鎖につながれた悪魔なのに。私は、人を愛したのか)




そういって、頬を少し赤く染めるがそれは顔の横のシュウザーには見えなくて。



夕焼けの中を、二人で学校からの帰路を歩く。




学校では、マルギルは座ってはいるし話も聞いているけど。

ずっと、黙って笑ってシュウザーの肩に座っているから。




それは、淡い恋の様なモノだったのかもしれなくて。

相手は、子供が成長していく過程で友情としか思っていなくて。




光を纏い、揺らいで。

容易く壊れそうな、そんな小さな世界。





(人は直ぐに大きくなる、直ぐに染まって醜くなる)



「シュウザー、学校は難しい事ばかり教えているのね」


「いや、ボクはもっと知りたい事が沢山あるよ」



(いつか、マルギルが悪魔でなくなる日がくるといいとボクはずっと考えている)



「そうなの?貴方はずっと、のめりこむ様に学ぶから少し心配だわ」



「気をつけるよ、マルギル」




そういって、夕焼けの中を二人で歩いて。



「「明日も、明後日も良い日が続きますように」」



二人の声が重なって、お互いが驚いて見合う。




生きているだけで、罪は増えていく。

それが、人なんだ。



生きる事が罪であり続けるのなら、せめて意味があって悔いなく。



それは、不幸を喰わない悪魔の運命は悲惨なものだと知っている。



「それでも、私は貴方の妖精で居続けたい」



そんな小さな呟きと、そんな小さな願いは紅い空に消えて行く。

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