第4話 寝たきり二人
自室に戻ったシュウザーが、マルギルを寝かせているかごの横に座った。
ふぅと溜息を一つ、ついて母の言っていた事を考えていた。
「エネルギー?つまり、ご飯みたいなもの?」
そういえば、マルギルがご飯も水も食べた所を見たことが無かったシュウザーが途端に青ざめた。
「起きたら、謝ろう」
そう、シュウザーが呟いた。
月明かりが窓から、差し込んでシュウザーもうとうとし始めた頃。
マルギルが、ゆっくりと眼をあけて苦笑した。
「シュウザー…、初めて自分の力を使ったから加減が判らなくて。心配させて、ごめんなさい」
そういうと、もう一度目を閉じる。
眠ってはいない、眼をゆっくりと閉じただけだ。
翌朝、母親は動けるまでに回復しシュウザーの部屋をのぞいてみたらシュウザーは座ったまま寝たのか変な恰好でずり落ちていた。
マルギルは、慌てて枕元の自分様にシュウザーが用意してくれたかごに入る。
さっきまで寝ていた、シュウザーのベットにシュウザーの母が寝かせようとしたからだ。
(私の姿は見えず、声も聞こえない)
「だから、しょうがないのだけど」
そういって、かごからひょっこり顔を出して寝かされたシュウザーの顔を覗き込む。
すぅすぅと寝息を立てて、眠っているそれを見て少し安心した。
「シュウザーの魔力も気力も命も、減ってない…。良かった、本当に良かった」
そういって、自身の両手を見つめ…。
自分の手が、僅かに透けたのが判ってぎょっとした。
「必要なのは私…?でも、シュウザーのお母さんを助ける為にはこれしかなかった。直観的に判ったのは何が出来るかだけで、何が減るのかは未知数だった…」
(それでも、私は助けたかった)
シュウザーをベッドに寝かせると、ふらふらと帰っていくそれを見て。
息の無い、ため息をついた。
私と同じように、シュウザーが心配なのは判るけど。私は、貴女の事も心配なのよ。
マルギルのその呟きは、誰にも聞こえず。
「ありがとう、妖精さん」
マルギルは、ふとそれを言ったシュウザーの母親であるシェイの方を見たがシュイは明後日の方向を見ていた。
(言葉は届いている)
マルギルは、どうせ見えてないだろうけどと思いながら左手を軽くあげて微笑む。
(どういたしまして)
その気持ちだけ、伝わらない事は百も承知している。
それでも、助かって良かったとマルギルは思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます