第49話 彼女は乱入してくる
「あれっ。叶奈も実行委員メンバーだったっけ?」
放課後。文化祭実行委員メンバーのみの話し合いに参加した司と叶奈は、希に声を掛けられた。
希は別クラスの実行委員で、司も叶奈もそのことを知っているため驚きはなかった。
「え、えっと……成り行きで……? メンバーというか、お手伝いさんな感じなんだ」
未だにこの場にいることがしっくりこないのか、叶奈が苦笑いで答える。無理もない、昨日いきなり司から手伝って欲しいと頼まれたのだから。
「僕が生徒会とクラスの実行委員を兼ねているから、業務を少し手伝ってもらうことになったんだよ。学業もあるし、やっぱり可能な限り負担は減らしたいと思ってね」
叶奈の隣で司がにこやかにそう話すと、希もなるほどねえ、と頷いてニヤリと笑った。
「確かに森本くん、二学期入ってから多忙だもんね。やるじゃん、叶奈」
「え?! え、えと……ま、まあ、幼馴染だから、ね。いろいろ、力になれることがあるんじゃないかなって思ったから……」
顔を赤らめて、叶奈がちらちらと司を見る。そんな彼女をからかうように肩を抱く希とのツーショットは夏の大会以来で、これはこれでいい百合だな、と司が内心満足していると、不意に彼の右腕にぎゅっと柔らかい感触が絡みついた。
「あたしももちろん、力になるよ〜? 森本く〜ん」
「え、っ?!?!」
その柔らかい感触の主――鈴音が腕を絡め、片目を瞑ってこちらを見ている姿を目の当たりにし、司は卒倒しそうになった。
「鈴音ちゃん? 何でここにいるの?」
「せーとかいちょ〜さんからお願いされたんだ〜。文化祭の間だけ、生徒会の中の人として手伝ってもらえないかって」
司の腕にしがみついたまま、鈴音がにっこりと叶奈に笑いかけた。
「そ、そうなんだ」と相槌を打ちながら、叶奈の表情が強張っていく。それを見てヤバイ、と司が何とか鈴音を振りほどこうとした時、
「ちょっと、アンタたち。いつまでくっちゃべってるつもり? 時間がないんだからさっさと席に着きなさいよね」
ドスのきいた声でそう告げてきたのは、生徒会員であり文化祭実行委員のまとめ役である一途だった。海の家で会った時は常に縁の隣で蕩けていて人の形を為さなかった彼女だが、二学期になってからはさすがに余裕がないのか、トレードマーク(?)のツン全開で、常に不機嫌そうな態度だった。
「はーい、チワワパイセン」
「チワワ言うな! 小花副会長サマよ!」
「え〜、長い〜」
「長くないわよ! いいから着席! 新人! アンタも女子に囲まれてポケポケしてないで取り締まるとこは締まんなさいよ!」
「すみません、チワワ副会長」
「アンタもちょっと面白がってんじゃないわよ!」
キャンキャン吠える一途を見て、司はようやく平常心を取り戻した。鈴音からさり気なく腕を解かせると、素早く黒板へ駆け寄った。
「では、みなさんお揃いなので、文化祭実行委員の打ち合わせを始めたいと思います」
視界の端で戸惑いを隠せない叶奈、ハテナマークを頭に浮かべる希、こちらをにこにこ見つめる鈴音が見えたが、全てスルーし、司はチョークを手に取った。
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