第33話
父が俺達と四天王のおじ様達と仲良く話していたからだろうか。
我が儘姫の機嫌が悪い。
「わらわ足が痛い、早く座らせてたも。」
昔から父を巡って、しのぎを削っていたもんな。四天王のおじ様達は父が母のせいで王位継承権を喪った事、母が政略結婚で無理矢理嫁いできたこと、そしてその後の仮面夫婦生活を深く静かにに怒っていた。
母は母で、父と仲の良い四天王のおじ様達に密かに嫉妬していた。家以外はほとんど一緒にいるから…。母は、父と砕けて話すおじ様達が羨ましかったんだろう。
でもね母よ、我が儘は止めた方が良いよ。俺より先に断罪されちゃうよ。ほら、四天王のおじ様達キレかかってる。
本当は第一部から来る筈だったのに、父に華陽の舞を見せたくなくて妨害したんじゃないのか?おじ様達だって、娘の晴れ姿見たかったに違いない。駄目じゃないか。
「ライラ。」
母の名を呼ぶ父の声がうっとりするくらい甘い。父、そこはちゃんと注意しろよ。だから母がつけあがるんだよ。
「わらわ、レオナルドの膝にしか座らぬ。」
つんと母がそっぽを向く。
ほえ?公式の場で何を言い出すんだこの人は。
相好を崩した父は早速母を抱き抱えて座る。家でしていたような定番のお膝抱っこスタイルの出来上がりだ。
「ライラは本当にイケナイ子だね。」
父の少し掠れた低音が腰に来る。母の髪を一筋掬って唇を寄せる仕草が悩ましい。
色気が駄々漏れになった父に抱き抱えられた母は、若干ぷるぷるしている。
恥ずかしいなら初めからやらなければいいのに。何がやりたかったんだ?
母が固まる四天王に向かい、どや顔をする。気位の高い猫みたいだ。
そうか、いつも四天王のおじ様達に負けて悔しい思いをしていたから、今日こそはマウントを取りたかったのか。
何やらふたりの世界に入った両親と微動だにしない四天王。そして、真っ赤になって俯く美少女達。
お願いだ。もはや公の場うんぬんはどうでもいい、思春期の子供の前では止めてくれ。折角オリビエちゃん達と仲良くなれそうだったのに、絶対ひかれてるよ。
このカオスのような状況の中、肩を叩かれた。
「アレックス様、今のうちにお着替えをなさってはいかがでしょう。」
一人冷静な執事がテキパキと簡易の試着室を設置していた。
ありがとう、執事。
こんな簡易試着室どこから持ってきたんだなんて野暮な事聞かない。
聞かないけど俺、この試着室にずっと閉じ籠っていたいよ。
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