第32話



 まさかの衣装ズタズタ事件にへこむ。まあ、悪役令息ですから仕方ないですが。



 で、俺の叫び声を聞いたオリビエちゃんは強烈な回し蹴りでドアを蹴破って来てくれた。


 オリビエちゃんよ、君は前世で某美少女戦士になれるにちがいない。


 格好可愛さに惚れそうだぜ。



 オリビエちゃんの指揮の元、ギリアム先輩が呼ばれて速やかに現場検証が行われた。


 事件は、何事もなかったように箝口令がひかれた。



 噂好きの女性達のお口をきっちり締めてみせるオリビエちゃん、すげー。



 衣装はヴィヴィアンちゃんがなんとかするからと観客席でゆっくり舞台を見てくるように送り出そうとしてくれたがそうはいかない。


 二人だってこの行事を楽しみにしてたの知ってるもん。



 てなわけで、舞台が一望できる関係者以外立入禁止の二階VIP専用席にて三人で続きの舞台を観ながら服の補正中です。


 オリビエちゃんの衣装は少し胸元を縫って縮めればそのまま着られるらしい。ヴィヴィアンちゃんの衣装は少し大きめだから、全体的に縮める必要がありそうだ。アレックスってちっちゃいのね、ぐすん。



 VIP席には父とその側近四人が来る予定らしい、VIP席の鍵をくれたギリアム先輩談だけど。だったら、ここで作業してても見逃してくれそうだ。



 第一部の華陽の舞が終わる頃には衣裳の補正が出来上がった。ヴィヴィアンちゃんすげー。真剣な表情の綺麗系美少女最高です。その仕事の早さと美しい出来映えに感嘆する。



 その時ノックの音が響いた。



 VIP専用席の扉が開く、鋭い目付きをした執事がこちらを見回した。



 俺を見て目付きが緩む。少し驚いた表情の執事はそこでオリビエちゃんとヴィヴィアンちゃんを見た。


 俺が女子ふたりを侍らせてこんなとこでイチャイチャしてるなんて、ふはは。もしかして、モテてるように見える?


 いやいや、うちの執事は騙されてはくれなかった。



「おや、オリビエ様、ヴィヴィアン様も御揃いで。お父様方もこちらにお見えですよ。」


 えっ?執事、オリビエちゃんとヴィヴィアンちゃん知ってるの?この二人のお父様方って?


 


 父が現れた。儀礼用のきらびやかな軍服でなく、シンプルな黒の軍服が父の美しさを引き立てている。母のほっそりとした腰にがっつりと腰に手を回してエスコートしている。母同伴なんて珍しいな。


 母のふわふわとした年齢不詳な妖精感が魔王に捕らわれたお姫様みたいだ。たぶん助けに来る勇者はいないだろうけど。合掌。



 後ろには父の側近で通称四天王と呼ばれてる渋いおじ様達が入ってくる。


 ガッチリ系に綺麗系と選り取り見取りのイケオジの宝庫だ。イケオジとはいえ、みんな30歳くらいだから前世の俺の感覚からいくとまだまだ若くてめっちゃ格好いいんだよな。


 皆既婚者だから短い髪をきっちりセットして渋いスーツや騎士服でばっちりきめてるあたりがまた良い。前世で言うところの所謂リーマン萌えだ。



 四天王のおじ様たちと母は父を巡ってバチバチの犬猿の仲なのに、今日は一緒でも大丈夫なのかな。


 まあ、いつも母が負けていじけてるだけなんだけど。



「アレックス、こんなところで何をしているんだ。」


 父が眉をひそめる。父はともかく、母に衣装ズタズタは言えやしないよ。


「友達のオリビエちゃんとヴィヴィアンちゃんが衣装をより素敵にしてくれるって言うから、お願いしたんだ。」


「ほう。良い友人が出来たみたいだな。」


 オリビエちゃんとヴィヴィアンちゃんを見ながら父が笑う。でも、父。その圧倒的魔王感と魅惑の低音ボイスで囁くなんて反則ですぞ。ふたりの美少女が堕ちたらどうするんだ。


 


「オリビエ、アレックス様の友人なのか?」


 知的なインテリヤクザ風のおじ様がオリビエちゃんに話しかけた。細身のスーツが素敵だけど、魅惑の細マッチョと見た。若頭っぽくて萌える。


「ヴィヴィアン、いつの間にアレックス様と仲良くなったんだ。」


 その横にいる綺麗系のおじ様はヴィヴィアンちゃんの父か?ほっそりとしながら長身でエレガントな感じすごく似てるな。



 まさか、二人が父の側近の娘さんだったなんて…。



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