第28話
差し出された黄金の鈴飾り。
意味が解るかどうか試されている。良いものをありがとうと普通に貰うような代物ではない。
あのリヴィエラ公爵が単純にこんなものをくれるとは思えない。何か裏があるに違いない。
それに今頂いたとしたら、儀礼上コンテストでこの難解な鈴飾りを付けて踊らねばならなくなる。こんなもの付けて踊るなんて不可能に近い。出来れば穏便に辞退したいな。
「すごく綺麗だね。触ってもいい?」
アレックスが目をキラキラさせて鈴飾りを手に取った。可愛い。その愛らしい姿に執事のビリビリとした威圧感がふと緩んだ。
少し冷静になる心の余裕が出来た。アレックスの指先越しに鈴の内側がちらりと見えた。中には小さな翡翠の玉。
アレックスの瞳を思わせるとろみのある深い色合いの上質な翡翠。金と翡翠、アレックスの色だ。欲しい。
アレックスを表す非常に繊細で美しい鈴飾り。
普通の鈴飾りが一連であるのに三連に複雑に絡み合い、優美な曲線を描くそれ。
しかも、鈴は一つ一つが大きさがわざと微妙に異なって作られている。
全身に付けたならば、音を鳴らさずに歩くことさえ難しいだろう。ましてやこれを付けてあの月華の舞を踊るなど…。
覚悟を試されている。試練を受ける覚悟はあるのか、それでもアレックスを欲するかの問い。
どれだけ厳しくても苦しくてもアレックスが手に入るならば、耐え抜ける。
まさか、これは試練の鈴なのか。
恐らくこれはアレックスを穏便に手に入れる最初で最後のチャンスだ。
心の奥底まで見透かされるような執事の目を見つめた。
「謹んで頂きます。これで閣下のお望み通り踊りきって見せますと、リヴィエラ公爵にお伝え下さい。」
この人は元王家の影。リヴィエラ公爵に心酔して影を抜けた。そうしてリヴィエラ公爵の文字通り懐刀として働いている腹心中の腹心。
虎穴に入らずんば虎子を得ずか、良いだろう虎穴に入って思う存分踊ってやろう。
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