第22話ノワール


 ギリアム先輩が一番危険だ。



 物腰柔らかでアレックスすら目を奪われる整った容貌。爵位は伯爵だが、この国の法曹界を牛耳るバルドー一族の嫡子。アレックスを近付けたくない。


 だから、ギリアム先輩がアレックスをこれ以上構わないように遠ざけた。



 結果。


ギルバートがアレックスに引っ付いている。



 アレックスに渾身の舞を何度も踊ってアピールする、ギルバートにイラつきが隠せない。


 ギルバートは、騎士団団長の嫡子。男らしい精悍な顔立ちと鍛え上げた肉体、豪快でさっぱりした性格の好男子だ。


 そんな彼を女性達が放っておくわけがなく何人もの大人の遊び相手がいた。


 そんな彼は、アレックスとの例の一件以来遊びをやめた。


 だいたい、幼い頃にもアレックスに付きまとってノワールを排除しようとしていたくらいだ。奴も相当危険だ。



 学園に少し通っただけで、ギリアム先輩とギルバートという大物を釣り上げたのだ。



 私がどれだけ排除しようとしても、次から次へとライバルが湧いてくる。



 アレックスの言っていた10年後の話が現実味を帯びてくる。監禁凌辱。 


 アレックスは天性の人たらしだ、加えてあの美貌。



 周りをこれ以上たらしこむ前になんとか囲ってしまいたいと思案する自分が怖い。


 学園での時間も長期休暇もそしてこれからのアレックスの人生も全てを手に入れたい。


 あなたの笑顔を守る為に、どす黒い欲望が渦巻く私からいっそ逃れて欲しい。



 なのに…。



「ノワール、長期休暇中も一緒に練習しようね。俺、ノワールの月華の舞が見てみたいな。」



 あなたがそんな顔して私の隣で笑うから。私の月華の舞を見たいなんて言うから。


 ねぇ、アレックス私はあなたの側にいてもいいですか?



 あなたが望んでくれるなら、私は出来る限り平穏に優しくあなたを手に入れてみせます。


 あなたが囚われた事に気付かず、常に私の隣で笑っていてくれるように。




 ああ、まずは外堀を埋めていきましょう。取り敢えずは、あなたの両親から。


 家の力では劣る私は正攻法では、あなたを手に入れる事は難しいでしょうから。



 あの日蒔いた種はどうなっているかな?楽しみだ。




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