第15話オリビエ
始業式。それは、新たなる同志獲得の舞台。
お二人の素晴らしさを知っていただくべく、私たちは作戦会議を行った。辺りから一番よく見える中央部分におふたりをごく自然に誘導。しかもお二人のお席は周囲より若干高くなるように細工を施した。しかもね、始業式の間この席には一番美しくステンドグラスの光が射し込むの、ふふふ。
作戦会議中に通りかかった、そこらの男子学生共も有無をいわさず徴収して、明日唄う聖歌の練習もばっちり。一音たりとも間違えさせないわ。
男子学生共には練習後にホールの清掃もお・ね・が・い、しておいたから一石二鳥ね。休み明けのたるんだ空気は一層して差し上げたわ。
お二人の周りには小柄で可愛らしい新入生を配置しましょう。入ってきたばかりのいたいけな子羊ちゃんをがっつり獲得するのよ。
いつもなら、雑然と入場し好き勝手に座るたるみきった始業式を、このわたくし共がきちんと整然と仕切って差し上げますわ。
子羊ちゃん達、おふたりの神々しさを存分にその目に焼き付けるといいわ。
準備万端、あぁ明日が楽しみだわ。
「同志達よ!今日はわたくし達の会が本格始動する記念すべき日となります。そこで、わたくしから皆さまへささやかなプレゼントがあります。」
私は胸に付けた翡翠色のリボンを指差す。皆がざわめく。
えぇ、昨日同室のヴィヴィアンに手伝ってもらって夜なべで作ったのよ。知らなかったわ、学年二位の才女ヴィヴィアンがまさか針仕事が得意だったなんて…。
私が作ろうとしたより、格段に素敵な仕上がりになっているリボンを序列順にきっちり整列した皆に配る。
リボンには黒鉄色の糸でナンバーが刺繍してある。私のはNo.5。おふたりのご両親に敬意を表して4番までは欠番なの。
リボンを付けた同志達の誘導で生徒達が整然と入ってくる。おふたりもきっちり予定していたお席に誘導できた。予定時刻よりだいぶ早く全員が着席した。
いつも、だらだら好き勝手に入場して空いてる席を探してるから、予定時刻に始められないんだわ。
ほほほっ、わたくし達が仕切ればご覧なさいな、こんなに整然と秩序正しくスピーディーに着席できるではありませんか。
ホールのあまりの美しさにアレックス様がキョロキョロなさっておられるわ。あどけないお顔もお可愛らしい。良い仕事したわね男子、褒めて差し上げてよ。
さあ、アレックス様、わたくし達の練習の成果をBGMにさらに輝かせてみせますわ、ふふふ。
まあ、なんてこと…。
聖歌に感動して泣いてらっしゃるわ。ステンドグラスの光を受けて金の睫毛に溜まった涙がキラキラと七色に光る。なんて神々しいのかしら。
はらはらと涙が零れるさまが麗しくて目が離せない。
そんなアレックス様にノワール様がハンカチを差し出された。交錯するおふたりの視線。
ああ、この素晴らしき一幕をわたくし達に見せていただいたことに感謝を。
ああ、願わくはこの一幕を後世に遺したい。
そして神よ。わたくしは、またもや大いなる過ちを犯すところでした。
今後の活動をスムーズにする為だけに同志をやみくもに増やそうなど、俗世にまみれきった愚かな考え。
そんなもの必要ないのだと気付かされました。ただただ純粋におふたりを愛でる心、それこそがわたくし達の愛。気付かせてくれて、ありがとうございます。
この日以降、翡翠の会入会には厳しい選抜試験をくぐり抜けた体力、知力、容姿に優れた者だけしか入会を認められなくなった。
シリアルナンバーを持つ初期メンバー、シリアル。厳しい選抜試験をくぐり抜けた選抜。そして予備軍によるヒエラルキーで組織化された翡翠の会はその存在を増していく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます