第14話



 今日は始業式だ。


初めての学園生活に馴染めるか不安。



 友達100人できるかな?なーんて、昨日女子学生一同に取り囲まれた身としては贅沢は言ってはならないとわかっております、はい。


 しかし、隣にいる力強い存在を見つめる。ぶっちゃけノワールがいたら大丈夫じゃね?


 なーんて、あくまで他力本願な俺。



 始業式が行われるのは、ゲームの最初の出会いの舞台となったホールだ。


 高い天井から差し込むステンドグラス越しの淡く色づいた光が美しい。



 パイプオルガンの優しい音色が天井から降り注ぎ、在校生一同が唄う古代語を使った聖歌が圧倒的な美しさで鳴り響く。


 一音も違わず紡がれる荘厳な音の響きの坩堝に立っている、ゲームでは表現されなかった学園のその姿に感動する。


 感動して、はらはらと泣いてしまった俺にノワールがハンカチを差し出した。


 涙の膜を透して見るノワールが神々しい。ノワールの黒鉄くろがね色の髪にステンドグラスの光が色を添えてとんでもなく美しいです。流石ゲームの難攻不落の攻略対象者様、課金したい。



 あぁ、このハンカチ収集したい。


借りパクしたら、ノワール怒るかな?


 駄目だ。将来、借りパクで断罪されるかもしれないじゃないか。ちゃんとお洗濯して返そうっと。



 うん?よく考えたら、男子学生がこんなとこで泣いてたら、いじめられるんじゃないか?


 誰も泣いてるの見てないよな。ハンカチで涙を拭って辺りをそっと見回す。


 周りは誰も俺の事を見ていなかった。セーフ。



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