25.灯り
仰向けに寝転がった布団の上。視界の真ん中に豆電球のオレンジ色が、ぼんやりと部屋を照らしている。
眠れない。眠れるわけがない。
『今すぐとは言わない』
ミシルシ様はあのあと、急かすことなくそう言った。わたしは何も返せないまま時間だけが過ぎ、気づけばすでに夜だった。
『必ず、お主は選ぶだろうよ』
どちらを、とは言わずそう笑った顔が頭を埋め尽くす。選ぶまでもない。そんなの決まり切っている。
わたしはミシルシ様といたい。失いたくない。
話なんて聞かず。今日のことなんて忘れて。今まで通り穏やかに、ただ日々を過ごしていきたい。
「どうして……」
なのにどうして、そんなことはしない、聞きたくないと即答できなかったのか。寝返りを打つ。ひやり、と冷えた布団が肌に触れた。
本当はわかっているのだ。
ミシルシ様は聞いて欲しいと、望んでいる。それに気づかないふりが出来るほどもはやわたしも幼くはない。愛したヒトの細やかな期待をどうして無視することができようか。
「ミシルシ様」
「なんだ」
薄灯りのなか問いかければ、間髪入れずに返事が届いた。ゆっくり一度まばたきをして、身を起こす。意を決しわたしは、背筋を伸ばしミシルシ様に向き合った。
「――聞かせてください」
ぼんやりと浮かぶその姿からは表情までは見て取れない。
「いいんだな?」
「良くはないですけれど、知らないふりはできそうにないですから」
取り繕おうとした顔は随分情けない笑顔にしかならなかった。アナタが歩んできた道を、そしてわたしたちがどこへ行き着くのかを。
わたしは、知りたい。
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