第6話 初デート?

 ヨット部のパーティーが終わる少し前に会場を後にするこにした。二人ともまわりにいじられまくって少しうんざりしてるからだ。

「まだ20:00過ぎだけど、一回俺の家に車とりにいってからどこかでお茶でもしようか?」

「はい。あ、でもまだはやいから私は電車で帰りますよ。」

「まだ一人で帰るって言うんだ。俺おいてくの?」

「家までだと大変なので申し訳なくて。」

「斉藤さん頑固だね。そだ、ひろって呼んでいい?俺のことも好きに呼んでね。できたら名前がいいな。あと一人で帰るってまたいったら襲うからね、気をつけてね。」

「襲うのやめてください。洒落にならないです。」

「そだね、今日怖い思いしたのにごめんね。」

「私は山岸さんのこと、淳介くんって呼びますね。ところでおうちはどこなんですか?」

「渋谷から歩いて15分ぐらい。歩くの大丈夫?」

「すごいとこに住んでるんですね。さすがお坊っちゃま。」

「ひろも俺のこと言えないでしょう。箱入りのお嬢じゃん。」

「自分ではよくわかんないですよね。自分の家しか見たことないから。それに親がお金持でも私のものじゃないし。関係ないですよね。」

「そうだね。」

(なんか家のことはさばさば話すんだな。この子。)


 歩き始めて5分ほどしたらいたずらっ子のような目でこっちを見てきた。

「ねえ、ひろ。気付いてる?車にオリエンテーリングの袋置いてきたの?トランクにいれたでしょ。」

「忘れてました。やまぎ、、、淳介くん気付いてたんですか?」

「気付いてたけど、夜は送るって決めてたから黙ってたよ。」

「なんか意地悪。ちょっと怖いです。」

「ごめん、きっかけ欲しくて必死だったんだよね。」

「うーん。よくわかんないですけど、もういいです。」

(怒らせたかな。)

「怒った?もうこんなことしない。」

「怒ってないですよー。なんか意外だなって。」

「意外ってどういうこと?」

「淳介くんすごくかっこいいし。焦らなくても女の子よってくるから。そういうことしなさそうなのに。って思ったんです。」

「そんなことないよ。人からいくらもてたってさ、自分の好きな子じゃなければ意味ないじゃない。目の前で好きな子が他の男に囲まれてたり、無理矢理肩組まれていたら、焦ると思わない?」

「そういうもんなんですね。」

「ひろのこといってるんだよ?本当にわかってる?」

「え?」

「わかるように伝えるね。」

「すいません。順ちゃんからも言われたんですが男性の気持ちに鈍くて。よくわからないです。女子同士はよくわかるんですけど。」

「そうだったね。ごめんねあやまらなくていいからね。」

「じゃー最初から俺の気持ち話すね。わからなかったら聞いてね。わからないまま流すのはだめだよ、失礼なことだからね。」

「はい。」

「最初にひろ見たのは今日の朝でね。バス降りてきたとこだったの。俺は車とめて歩き始めたらひろが降りてきたんだ。ドキッとしたよ、綺麗で。まさかうちの大学にこんな子入るなんて思わなかったからさ。」

「私気づきませんでした。」

「だってその時点でひろの回りは男子が声かけまくってたじゃん。話しかける隙がなかったし。みんな狙ってて。どうせひろは声かけて来た人に普通に挨拶してたんでしょ?聞かれたら答えてさ。」

「その通りです。聞かれたから答えただけです。」

「でもね男子は答えてくれると少しは自分に気があるんじゃないかって錯覚するんだよ。だから、余計にしつこくなるの。だから品田君もすごくあぴーるしてきたでしょ。ひろが嫌でも普通に接するから勘違いしたんだよ。ここまでわかった?」

「わかりました。嫌なら嫌って言ってもいいんですね?」

「そうだよ。言わないと伝わらないからね。」

「続けるよ?俺さひろ見てたら心配になってきたんだよね。誰にでも笑って話すしさ。まだひろの学科とかわかんないし。話しかけられないしさ。」

「ヨット部のブース行ったら、みんなひろの話してるんだよ。かわいいかわいいって。まだはじめて見たばっかなのに気になって仕方なくて、部のみんなに俺が話しかけるから手を出さないでってお願いしたんだよ。付属上がりの後輩にも同じこといったの。」

「後輩からひろの学科教えてもらって、昼休み待ってたの。学食で。ここまでは理解できてる?」

「はい。」

「俺、すごく恥ずかしいんだけど。」

「顔赤くなってますね。ほっぺピンクで触りたくなります。」

「ひろ!触りたいとか言っちゃだめだよ。そんなこといったら他の男なら誘ってるって思うんだよ!かわいいとか触りたいとかは男には言っちゃダメだから。俺だっていつまで我慢できるか自信ないし。」

「ごめんなさい。そんな風にとられるなんて思わなかったです。でも嫌いなら触りたいって言いませんが。」

「わかったから。犬なでるみたいにほっぺなでたかったのね。」

「そう!そういう感じです。」

(心臓が持たないわー。俺は犬か!)

「ここ家。ちょっと待ってて。危ないから門の中いてね。」

(真っ白な豪邸だ。お坊っちゃまなんだな。淳介くんは。)


 ドアが開く音がした。見上げると私より若い女の子が立っていた。彼女と一緒に大きい犬も飛び出してきた。犬に顔をなめられ飛び付かれた。

「ライだめ!はなれて!大丈夫ですか?すいません?ライったらだめ!!!」

「大丈夫です。犬は大好きなので。」

「失礼ですが兄のお友達ですか?私は妹の真美です。はじめまして。」

「はじめまして。大学の後輩の斉藤弘子です。夜分に急にお邪魔しまして申し訳ございません。」

「いえいえ、ライがなめまくってごめんなさい。兄呼んできますね。すいませんライちょっと見ててくれますか?」

「見てますね。」

「お兄ちゃん、お兄ちゃん、ライがーーー」

妹の真美さんは家中に入っていった。犬のライは興奮したままで、ひたすら私の顔をなめてた。

(淳介くんは犬好きなんだ。)


 再度扉が開いた。お父さんとお母さんらしき人が出てきた。

(いきなりご両親とか。気まずいよん。)

「淳がすごい美人な女の子連れてきたって真美が言うので、二人で見に来ちゃいました。はじめまして。父です。こっちが淳の母親です。」

「ご挨拶遅れました。わたくしは淳介さんの大学の後輩の斉藤弘子です。夜分急にお邪魔しまして申し訳ございません。」

「斉藤さんも同じ大学なんだね。学部はどちらなんですか?」

「建築学科です。」

「同じなんですね。お家はどちらに。」

「あざみ野です。」

「淳も建築好きみたいだけど、斉藤さんも好きなんですか?」

「私は家を継ぐために建築学科にいきました。」

「跡継ぎなんですね、一人っ子なんですか?」

「弟がおりますが、少し頼りないので父の跡は私が継ぐことになってます。」

「女性なのに素敵ですね。」

「ありがとうございます。」

「パパ、いい加減にして。斉藤さん驚いているわよ。淳はやく呼んできてよ。」

「わかった。斉藤さんごめんね。淳がはじめて連れてきた女の子だから。舞い上がっちゃった。」

「斉藤さん寒くない?ライが淳に飛び付いたらコーヒーかぶってしまって、いま急いで着替えてるからもう少し待ってね。」

(淳介くんはお母さんにそっくり。お母さん女優さんみたい。細くてきれいだ。)

「今度はゆっくり遊びにいらしてね。今夜はお互いに驚いちゃったよね。ライが大興奮でなんかおかしいと思ったのよ。ライはわかってたのね。淳のこと大好きだから。」

「ライ君かわいいですね。犬大好きなんです。嫌われなくてよかったです。」

「斉藤さんのお家も犬を飼ってるの?」

「保護犬なんですが、紀州犬の雑種の雄を飼ってます。まだうちに来て数ヶ月の赤ちゃんですが。」

「ワンちゃんのお名前は?」

「パルです。うちの犬の名前は何故かわかりませんが世襲制で、父の子供時代から全部パルなんです。」

「なんか世襲制って素敵だわ。」

「ありがとうございます。」

扉が開きようやく淳介くんが出てきた。

「では斉藤さんまたね。絶対遊びにきてね。淳待たせすぎよ。」

「夜分すいませんでした。それでは失礼します。」

「母さんは見送らなくていいから入って。彼女送ってくるから。」

「はいはい、ではバイバイー。」

(すごい緊張した。今日はいったいなんなんだ。)


 ようやく車は走り始めた。時計を見たらまだ21:00前。ドット疲れた。

「ごめん遅くなって。」

「ライ君にアタックされたんでしょ?」

「ライがなんか興奮しててさ、車で飲むコーヒー準備してたら体当りされてさ。」

「火傷大丈夫ですか?」

「火傷してないか直接あとでみてくれる?」

「了解です!」

「ひろまた。気付いてる?」

「なんですか?」

「火傷の確認って裸にならないとわからないでしょう。それをいいよってさ。ひろが照れると思ったからわざといったのに。けろっと了解何て言われたらさ、俺のが恥ずかしいんだけど。」

「ごめんなさい。そう言われたら恥ずかしくてなってきました。」

「じゃー顔見せて。」

「前向いて運転してください。」

「ごめん。意地悪したくなったんだ。」

 

 246を下りながら二子玉川に近づいて来た。

「少し多摩川でも歩こうか?まだ時間あるし。」

「多摩川行く前に、マックのアップルパイ買ってもいいですか?さっきのパーティーで全然食べれなくて。」

「お腹すいてる?実は俺もほとんど食べてなくてさ。そういえば二人でみんなのオモチャになってたよね。食べてる暇なかったよね。どっか食べにいこうか?どこがいい?」

「どこでもいいですか?」

「どこでもいいよ。どこかある?」

「デニーズ行きたいです。」

「デニーズでいいの?ひろがファミレスとか意外だわ。」

「デニーズ行ったことがないんです。すかいらーくは一度あるんですけど。だから行ってみたくて。」

「デニーズ決定だね。」


 近くのデニーズにはいった。土曜の夜ということもあり、店内はほぼ満席だった。

「すぐ座れてラッキーだったね。」

「こんなに混んでると思いませんでした。」

「注文はタブレットからするから、メニュー決まったら教えてね。」

「実はもうきまってるんです。フレンチトーストとドリンクバーでお願いします。」

「それだけで足りる?ピザとサンドイッチ頼むからよかったらつまんでね。」

「ドリンクバーのやり方はわかる?一緒にとりにいこうか。」

二人でドリンクバーに。私はアイスコーヒ、ガムシロミルク入り。淳介くんはカフェオレ砂糖なし。

「ファミレスのドリンクバーがはじめてとかやっぱお嬢だね。スタバは行ったことある?」

「ないです。でもドトールはあります。スタバはなんか注文難しくて。避けてました。」

「意外だわ。お洒落なことには敏感そうなのに。」

「弱虫なんです。はじめてのこととか苦手なんです。」

「やっぱ温室育ちのお嬢だね。」

「お嬢じゃないです。」

「さっきはごめんね。うちの家族がさー質問攻めにして。」

「お会いするとは思わなかったので、驚きました。今日は驚きばっかですね。」

「俺もまさか親と妹が玄関出るとは思わなかったもん。親父寝てたし。」

「もしうちだったら、父は口きいてくれないかもです。今後父が無礼な態度とったらすいません。先に謝っておきます。」

「お父さん怖そうだな。」

「わたしには甘いんですけどね。」

「俺も来週の試乗会のあと送るついでに挨拶だけ行くよ。」

「無理しないでください。結婚する訳じゃないんだし。」

「来てほしくない?」

「そういう訳じゃないんですけど、いかんせん父の反応が心配で。」

「ごめん、聞いてもいいかな?」

「前の彼氏は挨拶はいったの?」

「きました。父は無視してましたけど。」

「俺も挨拶いくわ。やっぱり気になるし。」

「淳介くん、真面目なんですね。」

「どういう意味だよ。」

「さっきも言いましたけど、もてるから女性はとっかえひっかえなんだと。」

「俺もさっきいったけど、遊びじゃないからさ。」

「でも今日はじめてあったんですよ?それで本気とかわかんないです。」

「ひろさ、それ以上いったら怒るから。人が本気で話してることをちゃかすなよ。」

「ちゃかしてないです。だってわからないことはわからないって伝えてっていったじゃないですか。」

「ごめんあせりすぎた。でも俺でいいのかなってすごく不安なんだよね。一言でいうとさ、バスおりてきたひろを見て一目惚れしたんだよ。なんも知らないけどまだ。一目見てから、目が離せなくて。勝手に心配して。」

淳介君は恥ずかしそうに。顔を見たら赤くなっていた。

「案の定危なっかしくて、守りたいって思ったんだ。俺さこんな気持ちはじめてなんだよ。今まで彼女いたこともあるけど、大切だとか守りたいとか思ったことないんだ。だからさ、自分が夢中になるのも怖いし。ちょっとどうしていいかわかんないんだよね。ひろは今はどうおもってる?」

「何度も言いましたけど綺麗な人だなと。でも助けてもらったときに淳介くんの顔を見てほっとしたんです。腕つかまれたときも怖くなかったし。さっき高見さんいってましたけど、好きになりはじめてるのかなって。まだ自覚ないですけど。前お付き合いしてる彼には触られるの嫌だったんです。手をつなぐと手に汗かくし。近寄られると鳥肌たったのに、淳介くんは平気だし。さっきは私からほっぺ触りたかったし。これじゃ今の返事になりませんか?」

「ありがとう。近くにいてもイヤじゃないんだね。それだけで十分だよ。」

「また顔真っ赤ですよ。ほっぺ触ってもいいですか?意味わかっていってますからね。」

「ダメです。ここじゃ恥ずかしいから。そんな煽るなよ。マジで心臓壊れるから。」

「意地悪返し成功しました?」

「大成功だよ。はやく車行きたい。もう食べなくていい?」

「残してごめんなさい。お腹一杯です。車ならほっぺいいですか?」

「うん。」


 車に戻ってすぐおでこにキスをされた。

「嫌じゃなかった?大丈夫?ごめん我慢できなかった。」

「はい。でも恥ずかしいです。でも嬉しいです。」

「嬉しいとか言うな!我慢する身にもなれ。」

「ごめんなさい。じゃー今度は私の番。」

彼の真っ赤になった頬を人差し指の背でなでたあと手のひらでほほを包んだ。

「ひろなんて触りかたするんだよ。」

「だって触ってみたかったんだもん。」

「本当にひろは悪女すぎるわ。」

「嫌いになりました?」

「もっと好きになった。こんなこと他の男に言っちゃだめだぞ。触りたいとか。絶対だめだから。触りたかったら俺に言えばいいし。他の男に言ったらお前危ないんだからな。」

「わかりました。私が触れるのは淳介くんだけですよ。他の人は気持ち悪いし。」

「一つお願いしてもいいですか?」

「うん?何?」

「私からキスしてもいいですか?」

「ひろ自分で何言ってるかわかってる?」

「わかってます。だめですか?」

「いいよ。」

震えた手で頬を触りながら軽く唇を重ねた。

「ありがとうございました。」

「お前顔真っ赤だよ。」

「ごめん、俺からもさせて。もう無理。」

唇をすりぬけるように、自分の舌を撫でられ、転がされ。

「ごめん、気持ち悪くない?大丈夫?」

「ひろ大丈夫?泣いてるの?本当にごめん。」

「教えてよ。」

「今日はもう帰ろ。ごめん、怖かったよね。」

エンジンをかけようとしたとに袖をつかまれた。

「ごめんなさい。なんか嬉しくてそしたら涙が止まらなくて。嫌じゃなかったの。嬉しかったの。でもビックリしちゃって。うまく伝えられない。ごめんなさい。」

「よかった。嫌われたと思ったよ。」

「嬉しいっていってくれてこちらこそありがとう。」

「とりあえず今日はまだ早いけど送るね。これ以上一緒にいたら何するかわかんないから。ごめん。」

「そだ、明日よかったらドライブでも行かない?明日は練習ないんだよ。」

「はい。行きます。」

「月曜から本格的に大学はじまるから、夕飯前には返すけど。それでもいいかな?」

「はい。お任せします。」

「じゃー10:00に迎えにくるね。」

「話変わるけど、ひろのスマホ大丈夫?電話とLINE来まくってない?確認してごらん。」

「淳介くんのスマホは大丈夫ですか?」

「俺の電源落としたから。」

「順ちゃんと高見さん相沢君と品田君からです。」

「品田起きたんだな。お前が寝てる間に残念。」

「淳介くんおうちにつくまで電話かけてもいいですか?」

「いいよ。話そうか。近くにいるより今は電話のがいいかも。お風呂とか入って落ち着いたら電話してね。」

「お風呂長いからお家ついちゃうかも。」

「気にしないで。」

「では、今日はありがとうございました。」

「後でね。ひろ。」




 









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