第4話 勧誘
学食で話しかけてきた人があまりに綺麗で、なにも考えずについていってしまった。学食をでて売店のところで、
「ちょっとまってて、タバコきれてて買ってきてもいいかな?」
「あーどうぞ。」
売店の前で待っていると一緒に食事をしてたみんながやってきた。
「斉藤さんいたーーー。追いかけたけどすぐナンパされてて声かけにくかったよん。」
「ナンパじゃないよ。部の勧誘されてただけだよ。」
「で何部?なんでここに立ってるの?」
「何部かまだ聞いてないの。あとタバコ買うからここで待っててって。」
「ちょっと待って、なにもわからずついてくとかダメじゃん。危ないよひとりじゃ。」
「その人、同じ建築学科の2年なんだって。」
「え?名前は?それだけじゃだめだよ。私も一緒に行くわ。危なっかしくて見てられないわよ。」
「なんで危ないの?説明聞くだけだよ。」
「もういいからさ、その説明は後でしてあげるから。」
古川さんも一緒に聞きに行くことになった。
「おまたせ、レジ混んでてごめん。その子は友達?」
「説明に一緒に来てくれることになりました。一緒でもいいですか?」
「大歓迎だよ。斉藤さん彼女の名前聞いてもいい?」
名前言ってないのになんで私の名前知ってるんだろ。
「同じ学科の古川です。失礼ですが何部であなたはどなたですか?」
「え、まだいってなかったっけ?ごめん。俺は建築学科2年の山岸です。体育会ヨット部所属です。よろしくね。」
「古川さん斉藤さんはどこに住んでるの?」
「私は北綾瀬です。でもなんでそんな事きくんですか?」
「ヨット部って練習は江ノ島だからさ、家から通えるかなって。あれ俺変な奴だと思われてる?」
「ちょっと怪しいと思ってます。だって斉藤さん連れていっちゃうし。名乗らないし。」
「ごめん。斉藤さんが一人でいるとこ待ってたのは事実だけど。まわりに人がたくさんいて声かけにくかったんだよ。やっと話せたから勢いで誘いました。古川さんはめざといな。」
「で、斉藤さんはどこ住んでるの?」
「田園都市線のあざみ野です。」
「田園都市線懐かしいな。俺小学校M村学園だったから、通学で使ってたんだよね。」
話をしているうちにヨット部ブースについた。
ブースには10人以上の真っ黒に日焼けした人がいる。他のブースより華のあるひとが多く、うちの大学にしてはチャラい。
「俺石原です。機械工学科2年。俺と山岸と牧田は付属高校から一緒でそのままヨット部入ったの。ヨット部の2年はあと石井と佐分利と。。。全部で12人です。3年は井上さん。。。、この人今主将でぶちゃ犬みたいでしょ。4年は藤井さんと。。。。。」
部員の紹介を軽く受けてからパンフレットをもらった。ヨットの試乗会のパンフレットだった。
「ヨット部っていわれてもイメージつかないとおもうのよ。だから来週ヨットの試乗会やるからこない?お昼はヨットハーバーでバーベキューするんだよ。部に入るとか関係なく一度遊びにおいでよ。」
石原さんはなれた口調で説明をつづけた。活動の事、大会の事、部費の事。ずっとニコニコ微笑んでるだけだった4年の藤井さんが山岸さんとこそこそ話始めた。
「よかったらこの後飲みにいかない?明日は大学休みだし。」
「藤井さん行きなり誘ったら驚きますよ。」
「山ちゃんが女の子引っかけてくるのはじめてだし、お兄ちゃんは嬉しいだよ。そうそう飲み代は気にしないで、OBが来るからただ飯ただ酒だからね。他に友達さそってもいいからね。人数多い方が楽しいね。」
「斉藤さんどうする?体育会なら怪しそうじゃないし。後誰か誘ってみようか?」
「古川さんは来てくれるのー?嬉しいな。」
口達者な石原さんが間髪入れず反応した。
「古川さんちょっと待ってね。家に電話して親に聞くね。ちょっと行ってくるね。」
古川さんを置いて自分のロッカーのある学生会館に向かった。ヨット部のブースから学生会館までは100mぐらいだが、勧誘がすごすぎてなかなか前に進めない。腕を捕まれたり、肩を押されたり、断っても断っても私の話は誰も聞いてなくて正直つらい。気安く触られるのも気持ち悪いし怖い。山岳部の人に肩を組まれて無理やりブースに連れていかれそうになったとき山岸さんが来てくれた。
「斉藤さんまだこんなとこいたの?ロッカーいったの?電話した?」
「まだいけなくて。」
「じゃー行こう。古川さんも待ってるし、同じ学科の男子も今日行くことになったよ。山岳部さん悪いけど斉藤さんと約束あるからつれていきますね。すいません。」
大学会館へ歩きはじめた。
「怖かったよね。危ないから、手を繋ぐよ。。。。震えてるじゃん。大丈夫側離れないから。」
やっとロッカーについて、親に了解を得た。
(さっき怖かったな。山岸さんいてよかった。)
ロッカー室の前で山岸さんが待っていてくれた。
「家どうだった?」
「お待たせしました。行っていいそうです。日が変わるまでに帰ってこいと言われました。」
「門限了解です。飲みは渋谷でやるからね。トイレとか行かなくて平気?待ってるから行っておいで。泣きたいんだよね。待ってるの気にしなくていいよ。」
「すいません、行ってきます。」
女子トイレにはいったら一人になりどっと疲れがでてきた。
(今日は疲れすぎることばっか。)
ヨット部のブースに戻ると昼食を一緒にした連中以外にもうちの学科の女子が3人いた。ヤンキーぽいのが高見さん、ぽっちゃりでニコニコ笑う大沢さん、色白ではにかむ姿がキュートの伊東さん。話したことはなかったけど感じよさそう。
「斉藤さんやっと帰ってきた!!!あちこち拉致されてて大変だったね。そうそう飲み会行く人増えたんだよー。」
「ごめん古川さん、待たせて。みんな強引でどうしようもなくて泣きそうだったよ、怖かったよ。古川さんがさっき言った危ないの意味わかったよ。」
「待つのは大丈夫よん。それより藤井さんが気づいて山岸さん向かわせてくれたんだよ。」
「藤井さん、山岸さんありがとうございます。」
「全然OKよん。山ちゃん間に合ってよかったよ。山ちゃんカッコイイーーー。」
「藤井さんやめてください。結構危なかったんですよ。斉藤さん真っ青だったし。山岳部には一応謝罪しましたけど藤井さんからもお願いしてもいいですか?」
「ほいほーい。任せておいてー。行ってくるねー。」
ヨット部のブースには1年生が20人位集まっていた。今夜の飲み会は先着30名無料って書いてあったけど、こんなに大人数でびっくりした。会場の渋谷までは電車組と車に別れるらしい。古川さんと品田君がいつのまにか1年の幹事になっていた。
「品田君くるんだー?」
「斉藤さんと古川さん行くっていうから、ボディーガードのつもりで参加するよ。」
「品田君が一番危ないことしそうだけど。」
「古川さんが心をえぐるーーー。」
たった一日だけどいろいろあった。
「斉藤さんは高校の時のあだ名なんだった?私は順子だから順ちゃんって呼んでよ。」
「私は斉藤って呼び捨てでお願い。」
「俺も品田でお願い。」
「古川さんもじゅんなんだ。俺も山岸淳介だから淳ちゃんって呼んでね。」
「体育会の先輩をちゃん付けでは呼べないですよ。」
「古川さんは固いね。そうそう斉藤さんは渋谷までは俺の車で藤井さんと相沢君の四人で行くからね。」
「古川さんと一緒じゃないんですか?」
「ごめんね、貴重な女子だからみんな自分の車に乗せたがってね。申し訳ないけど女子はバラバラなの。でも古川さんが心配してお目付け役に相沢君つけたから安心して。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
「山ちゃん嘘はいけないよ?斉藤さんと二人で渋谷まで行こうとしてたことも正直に言わないとね。嘘だーめーよーー。」
「藤井さんやめてください。」
渋谷に向けて皆出発した。家族以外の男性と車に乗るのははじめてですこし緊張した。助手席の後ろの席で隣は相沢君。相沢君は口調は穏やかで気をすごく使う人だと一日一緒にいて感じた。藤井さんはタレ目で柔らかい雰囲気をもったテディベアみたいな人で、でも人の事をよく見てて鋭い、さすが元主将。山岸さんは外見はモデルみたいだが淡々と話す。話すとぜんぜんチャラくない。
「斉藤さんうちの大学のアイドルになっちゃったね。うちにもこんな子が入学するんだね。」
「藤井さんなんですかそれ?私今日一日からかわれ続けてもううんざりしてるんです。」
「斉藤さん自分の事自覚ないの?それはヤバイよ。相沢君ー。今日初日で建築学科どうだった?斉藤さん目立ったでしょう。」
「凄かったですよ。さっきいた品田なんかいきなり告白はじめるし。オリエンテーリングでですよ!!!!!男子連中は斎藤さんと古川さん確保に必死でした。」
「相沢君やめようよー。」
「品田のことより、斉藤さんの自己紹介で十和田とか言う教授が絡んできてすごかったですよ。教室氷つきましたから。」
「なにそれ?教えて」
「自己紹介で建築学科の志望理由もあったんですけど、斉藤さんはここにきたのは父の意思で私の意思ではないからわかりませんって。それを聞いた十和田が、斉藤さんのおじいちゃんが泣いてるぞって。」
「これで終わらずここからが爽快だったんです。この後の事で男子と教員は斉藤さんにはまったと思います。」
「相沢君もったいぶらずに教えてよ。」
「十和田に言われっぱなしで終わると思ったら、斉藤さん自分の発言で不快にさせてしまったのならすいませんって頭下げて謝罪したんですよ。なんか凛としていてかっこよかった。」
「斉藤さん十和田にやるねー。俺も建築なんだよ。あの子泣き爺は性格きついからね。初日から洗礼を受けたんだね。でも十和田に謝罪して十和田なんかいってきた?」
「その後はなにもなかったです。でも相田教授がグループの時や終わったあとも気づかって慰めてくれました。相田教授は良い方ですね。」
「相田教授がなぐさめた??????ありえん。十和田以上に性格悪いんだよあいつは。斉藤さんのおじいちゃんって何者なの?」
「祖父ですか?建築の構造の先生でした。十和田教授は祖父の弟子だったと相田教授が言ってました。わたしは十和田教授のことは今日知りましたが。でも、もう死んでますから関係ないです。」
「俺の研究室は相田なんだよ。だから相田の性格の悪さは骨身に染みてるのよ。相田は男子女子関係なく容赦ないの。相田がなー、信じられないわ。」
「じゃーお父さんは斉藤に跡取りになってほしくて建築無理やり行かせたの?」
「そうです。弟もいるんですができが悪くて。それまで進路は好きに選んでいいといっていたのですが、土壇場になってダメと言われて。父と戦うのに疲れて諦めました。」
「いいとこの子は大変だね。山ちゃん仲間ができたね。」
「藤井さんうるさいです。俺は建築好きですから。斉藤さんは何やりたかったの?」
「わたしは医者かCAになりたかったんです。」
「CAってキャビンアテンダント?」
「そうです。」
「斉藤さん似合いそうだな。でもすごい倍率だよね。」
「叔父がJalにいて入れてくれるといったので。」
「叔父さん偉いの?」
「今社長だったとおもいます。」
「うわー、本当のお嬢様がうちのどんくさい大学にはいってきた。すごいな。そうそうでも今日の飲み会をよく親が許してくれたね。」
「渋谷だったのと、帰りはタクシーで帰ってくることを守ればいいといってくれました。」
「帰りタクシーってまさか渋谷から?」
「はい、渋谷からです。」
「相沢君助けてーーーー。なんかこの子凄すぎて怖い。まじでヨット部だからうちの大学のいいとこの子があつまるのかなー。」
「斉藤さんまじで言ってる?タクシーって。」
「なんかすいません。おかしいですか?私。」
「そうだ斉藤さん、相沢君。今日ねうちの顧問の教授2名来るから。一人はうちの大学の理事長もやってて建築学科の教授だからね。斉藤さんのおじいちゃんのこと知ってるかもね。聞いてみようーーー。」
「本人に自覚ないのが真性だね、山ちゃん。山ちゃんは自覚あるもんね。」
「俺のことはどうでもいいです。」
「奥手の山ちゃんが勧誘してきたから今日はビックリしたけど、似た者同士で引き合ったのかもね。」
「なんですかそれ。どうせ女子に声かけるならかわいい子がいいにきまってるじゃないですか。」
「だって山ちゃんさ、先輩命令でも女子に話しかけないのにさ、うちの大学のアイドルと姫古川連れてきてさ。お兄ちゃんまじでビックリしたよ。お前こういう子が好みなんだね。」
「からかうのやめてください。部のことを思って頑張ったのに。」
「藤井さん山岸さん、斉藤さん寝てるから何話しても今は大丈夫ですよ。ちなみに品田はまじで斉藤さんにほれたみたいですよ。あと鳴川も。」
「山ちゃん、誰かに取られちゃうよ!!!!!!!!」
「もうこの話やめませんか?」
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