第4話 「君を私の弟子にしてあげる」
「ってことは、ダンジョン童貞!?」
「どっ……ええ、まぁはい」
急に童貞と言われ気まずく答える。
「すごっ!ダンジョン配信も見たことない感じ?」
「はい」
「ってことはもしかして、私のことも知らない感じ?」
「……はい、すみません」
すると彼女は顔を赤くし手で覆い隠した。
「はず~。てっきり私のこと知ってると思って自信満々に話しかけちゃった~。
もう、みんなも責めないでよ。
だってほら、今までインタビューしてきた人、全員私のファンだったからさー」
彼女はスマホを持ち出して自信を映していた。
多分配信していて、視聴者と話しているのだろうか。
彼女は咳払いをした。
「じゃあ、挨拶させてもらうね。
こんダン!美少女プロ
彼女はその場でくるりと回りポーズを決めた。
彼女の挨拶なのだろうか。反応に困る。
「はい。ブレンダさん。よろしくお願いします」
俺が握手のために手を差し出すと、彼女は笑顔で手に取りぶんぶんと大きく振った。
「それで
本名じゃなくてあだ名とかの方がいいかな。配信したときに身バレにつながっちゃうから」
「ダンジョンに入るときに決めるっていうのは、どこで決める感じですか?
この建物でなんか提出する必要がある感じですか」
「いやー、そんな感じじゃなくて。なんて説明すればいいかな。
ダンジョンに入って
こう……ウィンドウがでてさ」
アバター?ウィンドウ?
何のことだろう。ダンジョンに関する言葉なのは分かるけど。
「ダンジョンについて全く知らない人に説明するの難しいな~。
まぁ入って見たらわかるよ」
「そうですか。まぁ、あだ名でいいなら【マックス】にしておきます」
俺の本名は楠真人。真人の『マ』と楠の『クス』をとってマックスだ。
小学生のころはこのあだ名で良く呼ばれていた。
「マックス……じゃあ、まっくんだね。よろしく、まっくん」
「ブレンダさんもよろしくお願いします」
そうだ。この際、この改札機みたいなのも聞いてみよう。
「その、インタビュー中なんですけど、質問してもいいですか?」
「うんうんうん、なんでも質問していいよ。
ダンジョン知らない人からの質問って新鮮で面白いし」
「この改札機みたいなのってなんですか」
「……本当にダンジョンについて知らないんだね。
君の言う通りこれはダンジョンに入るための改札機だよ。
ダンジョンに入るためには、役所に事前に申請して許可された人しか入ることができないの。と言っても、高校生以上なら申請したら大抵許可されるけど。
許可されたらダンジョン会アプリを入れて、ここでピッてしないと入れないってわけ」
「なるほど」
誰もがすぐにダンジョンに入れるわけじゃないのか。
考えてみたら当然の処置だ。
ダンジョン内でトラブルが起こる可能性もあるし、役所で管理されていた方が良いだろう。
「ほら、子供とかが入って迷ったら大変じゃん。
C級以上なら職員がいるんだけど、D級は危険性が低いから自動改札機なんだよね。
まっくんは役所に申請して……」
「ないです」
「だよね」
俺はため息をつく。
まずは役所に行く必要があるみたいだ。
「じゃあ、俺は今日はダンジョンに入れないってことですか」
「そうだね。普通だったらね」
ブレンダさんはにやりと笑った。
「でも、今日は私がいるから。私と一緒なら入ることができるよ」
「え、そんなことができるんですか」
「うん。私はプロの
一般人でも一人くらいなら申請なしで同行させることができるんだ。
どう?一緒に行かない」
「いいんですか?配信中みたいですし……」
「全然いいよー。むしろまっくんみたいな初心者は珍しいからね。
視聴者も楽しんでもらえると思うし」
これはもしかしたらすごい幸運じゃないだろうか。
ダンジョンについて全く知らない俺が、プロである配信者の方についてきてもらえるなんて。唯一懸念点がるとすれば、俺は配信をしないつもりだったが、他人の配信に出演してしまったことくらいだ。
それでも、今回限りの出演だろう。
たった一回じゃ皆も俺のことをすぐに忘れるはずだ。
「ブレンダさんがいいならよろしくお願いします」
俺は頭を下げて頼み込む。
「うん。じゃあ、君を私の弟子にしてあげる!
弟子候補なら申請なしでダンジョンに入れるんだよね」
「え」
保護者同伴みたいな感じの制度を想像していたが、全然違った。
いきなり彼女の弟子って大丈夫だろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます