第10話

 次に目が覚めたのは、どこかの草むらだった。


 まるで、狸に化かされていたみたいだ。


 俺は服が土の湿気で濡れているのに気が付いて、起き上がったが、後頭部が〇ぬほど痛かった。


 俺のリュックとトランクはその辺に放り出されていた。俺が気になったのは、金のことだ。


 もしかして、ただ働きだったのかと俺は愕然とした。一週間もの間、俺は何をしてたんだろうか。犯罪すれすれのことまでしてしまったのに。


 そう言えば、俺の100万円のシネマカメラは?


 無事だろうか。


 俺はリュックの中を見た。


 残念ながら、カメラはなかった。


 その代わり、100万円の現金が入っていた。


 つまり、俺はその仕事がプラマイゼロだったことを悟った。


 中古のカメラと現金を交換してもらっただけだったわけだ。


 俺はしばらくショックで立ち上がれなかった。


***


 俺は今も売れないカメラマンをやっている。


 なぜかわからない。


 また、ああいう変わった仕事が来ればいいと思っている。


 撮影の仕事は一期一会だ。

 毎回違うから退屈しない。


 こんな性格だから、俺はサラリーマンには向いていないと思う。


 不幸で、貧乏で、一人ぼっちなのが俺には合っている。


***  


 あの村落がどこにあるのかは大体検討がついているけど、もう二度と近づくことはないだろう。俺自身も犯罪に加担しているのだから、再び行けるはずがない。


 最近、俺はあれは夢だったのではないかと思っている。

 今はもう確かめようがなくなってしまったからだ。

 葬儀会社ももうなくなっている。


 まさか、あんなことが現実に起こるはずはない。

 

 ただ、俺が確かめようとしないだけなのだが。

 それをやったところで、何の救いもないのだから。


 

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死後写真屋 連喜 @toushikibu

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