第22話 雪山テラス3 断罪
メアリは弓削に全てを話した。
東海林先生が好きだった事。いつもいい香りがしていると伝えたら愛用しているシャンプーをこっそり貸してくれた事。しかしそのシャンプーを使っている時に眼に入ってしまい具合が悪くなってしまった事。まだ掠れ声だが懸命に弓削に伝えた。自分のせいで先生が疑われたくないと考えて杢代彩乃にシャンプーを託して隠して欲しいとお願いした。その先はどうなったか記憶がなかった。まさか、生死の縁を彷徨っていたなんて気が付かなかった。
「よく話してくれたね。乙女心を利用した手口は許せないな」
「先生はどうなるんですか?」
「傷害罪に当たる犯罪行為なんだよ」
「でも、私とお母さんが学校に我儘言うから優遇されてるからそれに怒ったんだと思う」
「だとしても、これは犯罪なんだ。大人になったら規則を守って生きていかなければならないからね。」
メアリはこれからどうなってしまうのか怖くなり子供の様に泣き始めた。少女の涙に戸惑いを隠せない弓削と二神は看護師に後を任せて病院を後にした。
丸いままのりんご飴とカットしたりんご飴を作った。お土産にもしたいし今すぐ食べてみたいと思ったが美谷野先生が居なくなったので先生の為取っておこうと、透明の包みでラッピングをした。外から大きなブザー音が聞こえて部屋から外を眺めるとゲレンデに茶色先生が走っているのが見える。
「先生ー!茶色先生ー!」
「だめだ、全然気が付かない」
慌てている茶色を見て声をかけが聞こえていない。リフトの小屋に向かって走る茶色を見ているとブザー音が止まった。
「先生ー、ありがとー!」
ブザーを止めに行ったと勘違いした東雲里見が雪上テラスから手を振っている。
「東雲君、そこから何か見えるかい?美谷野先生が見えないかい!?」
「僕も探していたんですけどいないです。あっでもゲレンデの中央に黄色い雪上車が見えます」
観光客がいる時間に雪上車が動いていて、しかもゲレンデの中央を通るなんて何かおかしいと気付き左右を見渡す。するとスノーモービルが二台置いてあるのを見つけた。
「すみません。遭難者がいるのでこれ借ります」
「えっ、おい勝手に乗っちゃだめだよ、あっ」
返事もろくに聞かずにスノーモービルを走らせる茶色。ゲレンデに向かって行く赤いスノーモービルを見ている生徒たち。
「すげー運転してるー!」
「どれー?」
「あれだよ!赤いスノーモービル!かっけー」
「あれ誰!?」
「茶色先生だよ!」
東雲の指差す方へスノーモービルで突き進む。操作方法など知らないが親指のバーを押し込むと進み左手のブレーキを自転車の様に掴むと減速した。それだけ分かれば十分だった。黄色い雪上車は遥か遠くにいるがアクセスを徐々に押し込み雪を舞い上げてぶっ飛ばしていた。
今回の一連の事件は全てみことの為に起きた事件だった。東雲里見は両親が離婚し転校してきたばかりでイジメにあっていた。担任のみことがイジメに気付き主犯格の望月了を叱責し諭したことで逆恨みし怪我をさせられた。望月を許せない東雲はサービスエリアで望月を騙して置き去りにする事を思いついた。楽しみにしていたウインタースクールで一人ぼっちにする事で傲慢で独り善がりな事を思い知らせる、それは簡単な事だった。
蕎麦のチケットを二枚買いカウンターでそばを待つ東雲。他の客がいなくなったところを見計らって望月を誘った。
「今、蕎麦が無料のキャンペーン中らしいよ」
「まじか、最高だな。どこどこ?」
和麺コーナーに行くと二人分の蕎麦がでてきたので望月は信じて食べ始めた。
「皆にも教えてあげたいね」箸を割りながら東雲が言う。
「じゃあ、お前が皆の所へ行ってこいよ」と望月は命令をしてきた。
嫌々命令を受けたフリをして店を出た東雲は店頭の札をいじり『準備中』に変えて誰も入らないようにし、一人バスに戻った。バスの中でモノマネをして友達の笑いを誘いそのまま点呼の時も望月の声マネをして返事をした。楽しすぎてテンションが上がりすぎた。とうとう望月に仕返しをしてやった。最高の気分だ。バスはそのまま望月を置いて出発する。望月の傲慢さ加減を思い知らせることができる絶好の舞台だった。イジメた事への復讐とみことへの断罪を重ね合わせて執行していた。
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